仏様との出逢い


 昨日、地元の駅まで母親を迎えにゆき、山寺まで帰ってくると山寺の手前にある畑から灰褐色の大きな塊が飛び出してきた。イノシシである。続いてもう1匹。性別は不明だが若い成獣のように見えた。贅肉のない健康そのものの筋肉を震わせて、脱兎の如く?山の中に消えていった。時間は午後7時半。イノシシが出没するには早すぎると思うのだが…
(余談だが、昔読んだ少女漫画「エロイカより愛をこめて」by青池保子エーベルバッハ少佐というのが出てきた。「エーベルバッハ」というのはドイツ語で「イノシシの川」という意味だそうである。)


 本日も快晴である。

 シルバーウィークでお参りの方もやや多い。シルバーウィークにお寺というのもなにやらぴったりすぎて怖いくらいである。

 仏像を拝観に来られると私が説明することが多い。母は白い割烹着のまま、住職は小汚い作業服のまま案内するので、どうも拝観の方に失礼な気がするのである。というわけで私が居る時はできるだけ私が説明することにしている。

 仏像の拝観は1日に1人あるかないかだが、休日になると10人近いこともある。
 同じ内容を説明しているので何組か立て続けに同じ説明していると、だんだん疲れてくることもある。だが嬉しいこともある。

 本日は若い男女が仏像の拝観に見えた。

 20代前半とおぼしき二人はカバンにおそろいの熊のマスコットをつけていた。微笑ましいねえ、私にゃそんな幸せな20代はなかったよ…と内心思いつつ本尊→脇時→仁王といつもの順序で説明していく。最後に快慶作の執金剛神と深沙大将を説明しようとしたとたん

ゾワゾワゾワゾワゾワッ…

 と身体に鳥肌がたった。外は汗ばむくらいの陽気である。室内とはいえ寒いはずはない。
 すぐに理由がわかった。食い入るように快慶の仏様を見ている男性の感動が私に伝わってきたのだ。
 何年かまえにも一度そんなことがあったが、こんなにダイレクトなのは初めてである。ちょっとびっくりした。

 真摯に仏様に向かい合って感動している若者の感動が自分に伝わってきたことに私も感動を覚えた。
 そして作られて数百年もたってこれほど人を感動させる快慶という仏師の素晴らしさも改めて感じた。

「逢えて良かった」

 とその男性は素敵な言葉を残して帰って行かれた。

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