スピリチュアル110番


占いや癒しを背景にした悪質商法が横行しており、このため「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が12月4日にスピリチュアル・霊感被害110番」※を開設することになったと報じられた。

「開運のため180万円のアクセサリーを売りつけられた」
「お布施をすると天国に行けるといわれ母が献金している」
などの相談が寄せられているという。

お寺にも時々こうした相談が寄せられる。

よく新聞の折込広告に「○○易断」「××運命鑑定」など名称のチラシが入っている。
鑑定料は大抵3000円前後と安い。私の知人がこの運命鑑定に申し込んだところ、いろいろと問題点を指摘され150万円で運勢改善の祈祷をしてあげるといわれたそうである。その方は思いとどまったそうで良かったと思っている。

こんな事例もある。

お付き合い頂いているさる大きなお寺でのこと。ある時、このお寺が投石され、玄関のガラスを割られた。防犯ビデオが手掛かりになって犯人が逮捕されたが、犯行の動機は、この犯人は持病があって霊能者の相談に行くと、どこでもいいからお寺へ行って、お寺の玄関に石を投げるといいといわれたという…

私達の心は不安定である。
いともたやすく嘘やまやかしに踊らされて大切なものを失ってしまう。


スピリチュアルなものは全てまやかしであると決めてしまえば簡単だが、既存の宗教とこれらとの境界は極めて曖昧である。

仏教で行われている様々な行事を全くの迷信だと思っている人が大勢いる。
困ったことに僧侶である私が見ても迷信や誤解でしかないものもある。もちろん必要と思えるものもある。これはかなり難しい問題である。

日本人の心の実態はすでにかなりの度合いで無宗教、無信仰の世界にはいりつつある。
社会がひとつの宗教で拘束されることも不幸だが、精神の拠りどころとしての宗教を失ったことはとても大きなマイナスであると思う。

個人が全くばらばらになりつつある。その個人の内面にも確たるもの、安定したものが無い…その不安につけ入るのが「スピリチュアル」という看板を掲げて金儲けに精を出す人達である。本気でスピリチュアルなことがらについて考えたら、怖くて他人を騙すことなどできないはずなのに…

インチキなスピリチュアルの矛盾を指摘できるだけのきちんとした理性と素直な信仰心は両立しないのか?これはとても難しい問いかけである…

※ 03(3501)7071  午後1時から5時まで