シンプルなご馳走

  本日は日待ち(ひまち)という行事があった。

 「日を待つ」というのは前日から村のお堂に大勢が泊まって翌日の朝日を拝むという行事である。40年ほど前からは昼間に集まってお経をあげるだけの行事になっている。
 古い言葉で言えば「おこもり」である。昔は全国にあったようである。

 昼頃、会場になっている村の集会所に行くと食事がでる。
 何年か前に始めてこの行事に参加した時にまずびっくりしたのはこの食事である。

 
 ご飯と汁物。沢庵少々。おかずは大根おろしに一味を混ぜたものだけである。
 このおかずは薄いピンク色していてこの時期に降るみぞれの雪そっくりである。
 初めて見た時、そのシンプルさにまず驚いた。

 ところがこれがとても美味しいのである!
 この時期、雪をかぶると白菜やネギや大根は甘みを増す。その甘みを増した大根おろしに唐辛子のきりっとした辛さがとても合う。

 大根おろしの冷たさとご飯と汁物の熱さの取り合わせも絶妙である。思わずご飯をお代わりしてしまう。

 一体、いつ頃からこの食事が出されているか分からないが、もしかしたら明治くらいまでさかのぼるかもしれない。あるいはいは江戸時代からかもしれない…


 古い行事もさることながら、そこで昔から受け継がれてきた質実剛健とでも言いたくなるようなもてなしが素晴らしいと思う。この食事がいつまでも受け継がれて欲しいと思わずにいられなかった。