夏目雅子のミステイク

 「西遊記」というのは日本人にとって特別な存在である。マンガ、アニメ、人形劇、ドラマ、舞台、小説など数え切れないくらい翻案されている。なぜ日本人がこれほど「西遊記」に魅力を感じるのかは興味深いことである。


 私達の世代にとって印象深いのは夏目雅子三蔵法師を演じたテレビシリーズである。
 その後、宮沢りえ、牧瀬理穂、深津絵里らが三蔵法師を演じている。
 (「西遊記」を演じた女優は不幸になったり、落ち目になるというジンクスもあるそうである…深津氏らのご多幸をお祈りしたい。)

 やはり夏目雅子の演じた三蔵法師は凛とした美しさがあったように思う。

 気になるのは夏目雅子演じる三蔵法師が「般若心経」を唱えていることである。なぜならこのお経は三蔵法師がインドから持ち帰ったお経を翻訳して成立したとされるので、天竺に到達する前に「般若心経」を唱えるのはいかがなものか…

 ちなみに香取慎吾演じる四代目の孫悟空は「天国に行きたいか、地獄に行きたいか」というのが決め台詞だったらしいが、「天国」というのはキリスト教からきている言葉なので、仏教的にはやはり「極楽」と言ってほしいところである(笑)


 あの当時、インドへ行くというのは命懸けの旅である。
 絵に描かれる三蔵法師は旅姿で背にはお経を収めた大きな厨子を背負っている。歩いてインドに行き、たくさんのお経を背負って中国まで帰ってくるというのはスゴイと思う。
 
 先人の仏教に賭ける情熱の深さに脱帽である。そして偉大な先人が情熱を傾けた仏教の末席にいることを本当に嬉しいことだと思う。