至福のくずまんじゅう
【お坊様のレストラン】
本山の同期生の結婚式に出席のために九州に行き、夜遅くにようやく帰省した。
さすがに疲れたので熱いお茶で一服していると。母が小浜の有名なお菓子も貰ったが、その日のうちに食べないといけないので食べて欲しいとのこと。
出てきたのはくずまんじゅうである。
私はくずまんじゅうというのはあまり好きではない。
外見がまるで両性類の卵みたいに見えるからである…
和菓子なら夜食べてももたれないし…というくらいの気持ちで食べたら… う、うまいっ!
和菓子を食べて、久々の衝撃である。
ウチの母親は実務能力はあまりないのだが美味しいものに出会う不思議な才能がある。
くずの優しい味、水の澄んだ味、さらりとしていてなおかつコクのある餡の味、ふるふるした食感、 それらが渾然となって口から喉に通り抜けていく…くずまんじゅうを食べて葛(くず)の味をしっかり感じたのはこれが初めてである。
もう十年近く前になるが、田舎から送ってきたという自家製のコンニャクを食べさせてもらったことがある。形は不ぞろいながら、はっきり芋の味と風味がしたのである。コンニャクの原料となるコンニャク芋は里芋科の植物である。その時も素材本来の風味を残したコンニャクを素晴らしいと思ったことを覚えている。
小浜というのはお水送りで知られるように名水の地である。
そしてあまり知られていないが葛(くず)の名産地なのだそうである。
葛というと奈良の吉野葛を連想するが、この地域も日本屈指の葛の名産地なのだそうである。
名水と名葛の出会いである。
お店の名前は伊勢屋さんという。
創業天保元年という老舗とのこと。
HPを拝見するとくずまんじゅうは季節限定商品である。ネットで検索すると、このお店のくずまんじゅうを賛美しているブログをいくつも見つけた。やはりファンが多いらしい。お店でイートインも可能とのことである。小浜の和菓子屋さんというと耕養庵くらいしか知らなかったが、小浜に出かける楽しみがひとつ増えた。
お近くの方は是非召し上がって頂きたい。