名穴!? “足三里”
手近に置いてパラ読みしてる本に代田文誌著「鍼灸真髄」(医道の日本社)がある。
私は豊島区の雑司が谷というところで10年以上暮らしていた時期がある。
お風呂も付いていないような安下宿で浪々の暮らしをしていたが、ある朝、ゴミ収集所にゴミを出しにいくと古本が沢山捨ててあった。その1冊が気になって持ち帰ったのがこの「鍼灸真髄」という本だった。
私は澤田健(さわだけん)は近代の鍼灸界に大きな足跡を残した人物であるということしか分からないし、専門家の間ではどのように評価されているかも正直言ってよく分からない。ただ私にはとても気になる人物である。
ちなみに私の暮らしていたのは雑司が谷一丁目というところだったが、この澤田健師も長く雑司が谷に診療所を構えていたとのことでちょっとした機縁のようなものも感じる。
暫く前、夜になって突然妻がくしゃみが止まらなくなった。
ここ何日か夜になってから冷え込むようになったので身体が変調したようだった。
まるで花粉症のようにくしゃみが止まらない…
この「鍼灸真髄」を手に取ってみると、足三里は鼻の病の要穴という記述が目に付いた。
足三里は膝の少し下、足の側面にあるツボである。もちろん鼻からは随分、離れている。
半信半疑でツボとおぼしきところを探すと、明らかに凝っている部分がある。そこを押すこと数分…あれほど続いたくしゃみがぴたりと止まってしまったので少し驚いた。
翌日、今度は妻が足がだるいと訴えるので、またまた半信半疑で足三里を押すとやはり数分で脚が軽くなったという。またまた驚きである。
「鍼灸真髄」を読むと脚三里は澤田健師が治療の際、大抵の場合用いたという数少ない経穴(ツボ)のひとつであることがわかる。
ここに書かれている足三里の効能としては<胃病の要穴><鼻の病の要穴><眼がはっきりする><頭痛が治る><健脚の灸>など極めて応用範囲が広い。
足三里に灸をすることは昔から長生きの灸として尊重され、毎月、月初めの8日間はこの足三里に灸をすることが民間療法として行われたようである。
松尾芭蕉の「奥の細道」の冒頭にも「股引の破れをつくろい、笠の緒をつけかえ、三里に灸をすえて」旅支度を整えるという一節がある。
昔は「足三里に灸をしない人と一緒に旅行するな」というようなことすら言われたようである。
この足三里の経穴を刺激するのは私と妻のちょっとしたマイブームとなった。
その成果については機会があればまたご報告したい。