牡丹と萩 

 

今日は兼務している山寺で留守番。
最近は毎週月曜にこの山寺に出かけることになった。

このお寺の留守番係りは普段は檀家さんにお願いするのだが、当然、僅かだが御礼をお渡ししている。だが毎日となるとやはり結構な金額になるので、週一回でもお寺側でこの留守番をしようという貧乏寺の苦肉の策なのである。

山寺に行く途中、ふもとにある田んぼは殆んど稲刈りが済んで、茶色い稲株が整然とならんでいた。田んぼが役割を終えて静かな眠りについた感じがする。それでも切り株は黄金色といっていいくらい明るい色なので暗い感じはしない。山道にはたくさんの薄(すすき)の穂が揺れていた。薄の穂を見るといよいよ秋が深まったという気がする。

兼務している山寺は300株ほど萩があり、ちょうど満開になっていた。
白い花を一杯につけた細い茎が風に揺れているのは秋の風情である。

 この山寺に仮住まいしている妹が中秋の月にちなんでぼた餅を作ってくれた。
田舎では法事のときなどにぼた餅を作ることがある。
本来は小豆をまぶしたお餅のことを春は「ぼたもち 牡丹餅」と呼び、秋は「おはぎ 御萩」と呼ぶことになっているそうである。同じ食べ物を春と秋で花の名前で呼び分けるというのはなかなか繊細な感覚だと思う。

私は長い間、漉し餡で作ったものを「おはぎ」、粒餡で作ったものを「ぼた餅」だと思っていたが、その呼び分けはいろいろあるようである。念のためWikipediaで調べたら、春と秋だけでなく夏と冬で呼び分ける名称もあると書かれてあって少し驚いた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%AF%E3%81%8E

もっとも田舎で作られたものはどこか垢抜けていなくて、その感じが「ぼた餅」という言葉の響きにぴったりな気もする。

日本では言葉も季節も花も食べ物もみんな季節感を持っている。
その細やかな感覚を大切にしたいと思う

伊香山 野辺に咲きたる萩見れば 君が家なる尾花(をばな)し思ほゆ       笠金村