春の山寺


鶯(うぐいす)や椿落(おと)して逃げて行く 千代女


朝から鶯が鳴くようになった。

この間まで「ホー」とか「ケキョ、ケキョ」とか中途半端な鳴き方しかしなかったが、この頃ようやく一息で鳴くようになった。

寝床の中で聞く鶯は格別に快い。寝起きに鶯の声を聞くと頭の中を清水で洗われるような心地がする。


いよいよ田んぼに水が張られるようになった。

風の無い時の水面も良いが、少し風がたって縮緬(ちりめん)のような細かな漣(さざなみ)や、強い風で水面が散乱として光るのもそれぞれに面白く美しい。

檀家さんが田や畑に出ているのをよく見かける。
大変そうではあるが、どこか楽しげで生き生きとして見える。

桜も少し散り始めたが、ここ数日は当地では珍しい快晴が続いていて、青空を背景に桜を見上げると、ただただ見事というほか無い。

鳥も水も草木も人も皆楽しげである。
春は陽の季節なのだろう。