山寺の捕り物トホホな顛末記
最近、深夜や早朝に犬達が爆音で吠える。
境内を動物が徘徊しているらしいのである。
何しろ住職夫婦の寝室のすぐ隣に犬達が繋がれているので二人は相当閉口している模様。
とうとうアライグマ用の金属の罠を庫裏のそばに置いた。
これまでの戦果は野良猫一匹だったのだが、今朝はとうとう別の生き物が捕まった。
住職達はアライグマだと騒ぐのだが、アライグマのような縞柄の尻尾が無い。どう見ても違う生き物である。
眼は黒目勝ちでクリクリしていてかなり可愛い。檻の隅に小さく固まって荒く息をしている。心なしか震えているようにも見える。
『…このモビルスーツ震えてやがるぜ』(by『機動戦士ガンダム』第1話「ガンダム大地に立つ!」)
可愛そうに思って檻の外からペットフードをやろうと近づくと突然態度が豹変!
牙を剥いて物凄い勢いで威嚇するのである。
気弱そうなサラリーマンが突然
『ごるあぁぁぁぁぁぁ 何するんじゃワレェェェェ』
と吼えるようなもの。怖すぎである…
だが猟師さんに引き渡すのも可哀想に思い、罠から放つとその生き物はトコトコと駆け出した
『その生き物は何度も何度も後ろを振り返りながら山へ返っていきました。メデタシメデタシ…』
という結末を予想していたら、そいつは何を血迷ったかガレージの中へ逃げ込んでしまった。
車2台と大量の雑貨を収納している場所なので簡単には見つかりそうにない。
母親のそのことを話すと、今度は突然母親の態度が豹変して
『なんでそんな場所で放すのよぉぉぉぉ!』
2年ぶりくらいの激怒モード。毎晩の睡眠不足がよほど腹に据えかねていたらしい。
こちらも
『だった自分で始末しなよぉっっ!』
売り言葉に買い言葉でどーでもいい親子喧嘩の始まりである。その後は推して知るべしである。
恩返しどころか恩を仇で返した生き物の正体が果たして何だったのか、未だに不明なままである。