フルーツ王子の逆襲

住職の年代のお坊さんにとって楽しみといえばお酒を飲むことと囲碁を打つことくらいだったそうである。住職も例外にもれずお酒が大好きである。

一方、私達の世代のお坊さんになると趣味も多様化していて、お酒を飲まないという人も多い。私も特別なとき以外は飲まない。勿論、晩酌もしない。

一度、住職が晩酌をしている時に横で豆乳を飲んでいた。
別に当てつけではなく、その時は私の中で豆乳がマイブームでいろんな種類の豆乳を飲んでいたのだ。

住職が豆乳を飲んでいる私に

「おまえどこか悪いのか?」

と真顔で聞いてきた(笑)お酒を飲む人間にとって健康な男子が晩酌しないというのはよっぽど変わって見えるらしい…

その代わりといってはなんだがコーヒー、紅茶、緑茶などの飲み物は大好きだし、甘いものも和洋中なんでも食べる。特に果物が大好きである。いつの間にか妹から

フルーツ王子

と呼ばれるようになった。もちろん王子様に見えない私を王子と呼ぶところが彼女なりの皮肉なのである。
だが、最近困っているのはサクランボや桃などの高級な果物を食べると口の中が痒くなるのである。どうやら農薬に対する拒否反応らしい。というわけで王子という名前に似合わずリンゴやバナナといった庶民的な果物を食べている。

数日前、こんな夢をみた。
いつの間にかお寺の庫裏の横に大きなメロンの樹が生えていて、スイカくらいあるメロンが3個なっているのである。私が大喜びして食べようとすると横からサルの群れが登ってきてメロンを食べ始める。3個のうち2個は食べられ、残るは一番高い枝に生っている一個のみ。
私はサルに激怒して長い竹ざおをもってくると、竹ざおを振り回してサルを追い払う。それでも気がすまなくて、どこまでもサルを追いかける。サルが流れている川に飛び込んだ。私は思った

川の中なら動きがとれまい。サルを退治するチャンス!

…冷静に考えるとそこまでサルに執念を燃やす必要はないのだが、夢の中ではそう思ったのである。
自分もザブンと川に飛び込むとサルめがけて竹ざおを振り下ろすのだが、いくら叩いても手ごたえがない…

というような夢であった。最近、サルの被害があまりに多いので腹に据えかねていたのが、いつの間にか自分のフルーツ好きと混線してしまったらしい。

最近、小学2年生の甥っ子もフルーツが大好きということが判明した。
彼が一番好きなのはマンゴーというから筋金入りである。というわけでフルーツ王子は彼の愛称に代わった。尤も最近は妹に新しいあだ名を頂戴した。

元祖フルーツ王子

というのが私の新しい名前である。