秋風の中の絶唱

東京に十数年余り暮らしていたが、都会に住み、世の中の激しい動きを肌で感じられたことは貴重な経験だったと感じている。

こうして山寺で暮らしていると、当時のことを時々懐かしく思い出すことがある。
都会の夜というのは煌々と明かり灯り、車が絶え間なく走っていた。都会というのは静けさや暗さとは無縁である気がする。

頻繁に鹿の鳴き声を耳にする。
去年から鹿が増えていることは感じていたが、秋になって鹿が頻繁に鳴くようになると一層、その思いを強くするようになった。

都会の友人達に鹿の鳴き声を知ってもらおうと思ってYoutubeで「鹿の鳴き声」を検索したが、私が聞かせたいのは遠音と呼ばれるような、長く鋭い鳴き声なのだが、アップされていないようである。

暫く前は遠くで聞こえていた鹿の声が最近はもっと近くで聞こえてくるようになった。理由は分からないが、人里近くにまで下りてくることが多くなったようである。

少し前は

ぴぃぃぃぃとぅるるるるる…

というような鳴き方だったが、鹿が人家の近くまで来て鳴くのを聴くと

最初の部分が

ひぃぃぃぃ…

というように聞こえる。この部分は甲高くて、胸を締め付けられるようにさえ感じるのである。ある種の悲鳴を連想させるのである。
時々ぞっと肌が粟立つことまである。その悲しさというのは言葉にならないものがある。

この鳴き方は交尾期の鳴き方だと聞いたことがある。
人間がかってに悲しいなどと感じても鹿にしてみればもっと別の感覚で発していることは間違いない。
だが都会の人々に一度鹿の鳴き声を聞かせたいと常々思っている。

夜の秋気を破って聞こえる、この鹿の声を一度聞けば何か心を揺さぶられるものがあると思う。

今日も日が暮れてから何度も鹿の遠音が聞こえた。これから秋がいよいよ深まって、何度聴くのだろうかと思う。

尺八の名曲に「鹿の遠音」というのがあり、Youtubeに何曲もアップされていた。確かにに美しい楽曲ではあるが、実際の鹿の声とは少し趣が違う気がする。

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