観音の里の信仰をめぐる雑感

 






先日、初めて湖北の地を訪れいろいろと刺激をうけることが出来ました。



大本命の向源寺が閉門(涙)していたため隣接する<高月観音の里歴史民俗資料館>へ。


【高月観音の里歴史民俗資料館】http://ohmikairou.org/fac11.html
【参照記事「十一面観音の里」】http://suido-ishizue.jp/nihon/kohoku/00.html



(以下『』内は資料館のパンフレット『「観音の里」の信仰文化』より)



『湖北地方は、奈良時代以降、己高山(「こだかみやま」標高923m)を中心として仏教文化が栄えました。ことに観音菩薩像が集落の数に匹敵するほど多く伝わることから「観音の里」と称されています。』


○ 面白いですねえ…観音の里の信仰の源は<山岳信仰>にあったというのです。


○ この<山岳信仰>こそ仏教、神道修験道民間信仰、先祖崇拝、農村文化の根底にあるらしいというのは実に実に興味深い。おそらく深山には里の人々とは異なる価値観を持っていた人々が多数いて、その一部は縄文の末裔であった可能性があるのである。

○ 天台宗真言宗高野山比叡山という山岳にその拠点を構えた。いずれも標高800mを越える山々である。山岳への信仰にあってはやはり高い場所が尊ばれたのだろうか。己高山は高野山比叡山を凌ぐ高さだが白山の標高は2700mであることを考えると白山は広い地域から崇敬されたにちがいない。


○ 舞鶴の最高の霊山青葉山は古来より中央にも知られた霊峰である。

 青葉山は峰の2つある双耳峰だが比叡山も大比叡と四明岳の2峰から成る双耳峰である。青葉山の松尾寺は真言宗醍醐派の古刹だが天台宗の影響を大きく受けている痕跡がある。青葉山比叡山にはなんらかの関係があるのか。青葉山も鬼門にあると考えられたのか…




『応永14年(1407)の『己高山縁起』(鶏足寺蔵)によると、近江国の鬼門として古代より霊山と崇められてきた己高山は、奈良時代には中央仏教と並んで北陸白山十一面観音信仰の流入があり、さらに平安期に至っては比叡山天台勢力の影響を強く受け、これらの習合文化圏として観音信仰を基調とする独自の仏教文化を構築したことが伺われます。』


○「己高ほだかみ」「鶏足けいそく」などの名称にどこか違和感を感じる。言葉においても独特の文化がああったのかもしれない。



○ <鬼門>というのを忘れていました。観音信仰の源となった己高山はどこの鬼門だったのか…全ての山岳信仰が鬼門と結びついているのかは不明。




「法華経」って、そういうことだったんだ。

「法華経」って、そういうことだったんだ。



○ 正木晃さんが法華経を現代語訳された『「法華経」って、そういうことだったんだ。』を読んでいたら十一面観音や千手観音のように顔や腕が沢山あるのはシヴァ神の特徴であるという指摘があった。法華経のキモといえるのが観世音菩薩普門品。「普門」とは「あらゆる方向に顔を向ける者」という意味であり、正木氏によれば普門品はまちがいなく十一面観音のお経であるという。


○ <普き方向に顔を向ける>ということと鬼門の方位信仰は関係あるのではないだろうか?


○ 観世音菩薩普門品は「観音経」として広く読誦されているが十一面観音菩薩のお経というイメージはあまりないのではないだろうか…観音様は様々に変化されるとされるがそれだけに固定的イメージがつかみにくい。日本では三十三観音という信仰があるが、ネパールでは「百八観音」といって108種類もの観音様がおられるそうである。そもそも変化するという現れ方自体が実にインド的である。


【長浜の海洋堂ミュージアムに展示してあった十一面観音菩薩


平安時代以降、天台傘下として己高山を中心に栄えた湖北の寺々は室町時代には弱体化し、かわって浄土・曹洞・一向(浄土真)・時宗らのいわゆる新仏教が農民勢力の台頭に併せて勢力を伸ばし、戦国の動乱期にいたって、さらに大きく変容しました。村々にあった天大寺院の多くは衰退して無住・廃寺化し、そこに残されたホトケたちは、宗派・宗旨の枠を超越して、村の守り本尊として民衆に向えられていきました。
 
そして今日なお観音信仰はこの土地に息づいています。制作年代の新旧や指定の有無、造形的な巧拙や損傷の有無などを越えて、それぞれの村人たちは自分の村のホトケたちに対して、限りない誇りと親しみを持って手厚く守っています。観音像、指定文化財が多く存在するだけでなく、これらを献身的に守り継いできた民衆による信仰の歴史こそが、「観音の里」と称されるゆえんなのです。』



○ 湖北には実に様々な観音様が祀られている。
 異形といえるのは高月町にある正妙寺の千手千足観音立像。
 手も足も千本で、御顔が憤怒相(笑)…どういう意図で作られたのか…


○ 資料館で各地の観音様を紹介するビデオを上映していたが、印象に残ったのは木之元町黒田にある観音寺の千手観音立像。風格に富む御尊像でいつか訪れてみたい。


○ 井上靖の小説「星と祭」は観音の里を舞台にした名編とのこと。愛娘を亡くした主人公が湖北の古寺で観音様に出会うというストーリー。読んでみたいが600ページもある…でも名作らしい。


星と祭 上 (角川文庫)

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