バーモントカレーの逆襲

          お坊様のレストラン 


本山での研修期間(恥ずかしいのであまり「修行」という言葉は使いたくない)で最初の食事はカレーだった。

食事の前に誰かが本山ではカレーを食べる時は箸で食べさせられると聞いたと言い、皆一瞬不安になったのを覚えている。結局それはデマだったのだが…

カレーに凝っていて随分いろいろなカレー粉を試したことがあった。

池袋のサンシャイン60に第三世界の商品を販売するフェアトレードの店があり、そこのベジタブルカレーやシーフードカレー専用のスパイスをい売っていて気に入っていた。

本山でのカレー粉は「バーモントカレー」である。
スーパーに市販されているようなカレールーをバカにしていた私であったが、本山で食べるこの何の変哲もない「バーモントカレー」がとてつもなく美味なのである。もちろん肉は入っていないし、五薫であるタマネギも入っていない。お腹を空かして夕方のお勤めから帰ってくると食堂(じきどう)に明かりが点いているのを見るとそれだけで嬉しかったが、メニューがカレーだとみんな大喜びだった。単純なものである。自坊(自分のお寺)に帰ってからもバーモントカレーをよく作るようになった。

野菜だけのカレーを作っていて気付いたのは出来るだけ多く、最低5,6種類の野菜を入れると、多種類の野菜からいろんな味がでてとてもコクでるという事である。家で作るとしたらジャガイモ、ニンジン、タマネギといった定番に加えてキャベツ、白菜、エンドウ豆、トマト(トマトの水煮缶は是非加えたい)、キノコ類である。変わったところでは、梅干、プルーン、インスタントコーヒー、牛乳、ウスターソースなどもアクセントに少々加えたりする。

とにかくあまり難しいことは考えず、最低5、6種類の野菜を入れるというだけで野菜カレーはとても美味しくできる。あとゆで卵でもそえればたんぱく質もしっかり摂れる。私は柔らかめの目玉焼きを乗せ、スプーンで崩した目玉焼きをカレーと混ぜながら食べるのが好きである。ふるふるした淡白な白身や半熟の濃厚な黄身がカレーと合わさるとなんともいえず美味である。

バーモントカレー」をあなどってはならない…