鹿の声

 
 山寺にも少しずつ寒さがつのってきた。

 本山へ修行に行く際、寒いと聞いたので私は登山用の防寒肌着を買ってもっていった。かなり高価なものを2枚買った…しかし、寒さが本格化すると全然効かない!
 正月に帰省してまず買ったのはユニクロのフリース上下だった。これはとにかく暖かかった。但し、衣の下に着るのは白色のみなので、衣の下にユニクロの白いフリースを着込んだ変な姿である。しかも衣からはみだしたり、外から見えるのは厳禁なの襟元なぞ思い切りV字にカットしてある。最近はお坊さん用の襦袢もフリースでできたのがあって随分暖かいそうである。


  朝晩、鹿の鳴く声がする。

 少し悲鳴のようにも聞こえ、哀しい感じがするのだが、妹に言わせると発情した声だという…
 
 2年前の大雪の冬、家の周りの雪の深く積もった山の中を高速で移動する獣があった。
甲高い声で鳴きながら移動する気配がするのだがあまりにスピードが速いので最初は鳥だと思っていた。
 何日もそんなことが続いてある日から急に止んだ。
 そして敷地の奥にある貯水池に小鹿と親鹿らしい2頭が溺れて死んでいるのが見つかった。豪雪が貯水池につもって水面が分からなくなったようだが、私は多分、最初に子鹿が溺れて、それを親の鹿が捜してあちこち走り回っていて、最後に子鹿を助けようとして自分も溺れれたのではないかと思ってい る。

 鹿の甲高い声を聞くといつもこのことを思い出す。