お坊さんになるために

 嫁に「あなたのブログは食べ物のことばかり」と言われたのでお坊さんについて書こう…

 得度(とくど)という儀式がある、私は本山に入る直前、30代後半でこの儀式を体験した。

 これはお坊さんとしての仮免許みたいなものである、ここでお坊さんの名前を頂くことが多い。小学生くらいの子供や女性もいた。半日ほどで終わるが、正座する時間も長いし、子供なんかは大変かもしれない。泣きそうな顔をして脚の痛みをこらえている男の子がいて本当に可哀想だった。「得度受けたらゲームソフト買ったげるから」などとなだめすかされて参加したのかもしれない。

 お坊さんといえば坊主頭がトレードマークだが、得度式では形式的に髪を剃る作法がある。事前の説明で「三箇所だけ髪を残して得度式に臨むこと」という通知がある。
 言葉の解釈の違いで、丸坊主にしてお化けのQ太郎のように三本くらいの毛が三箇所に生えているような人がいるかと思うと、ポニーテールができるくらいの長髪を残してちょっと異様な感じのする人もいたり様々で面白い。

 うちの本山の一番偉い人は門跡さんと呼ばれているが、私の僧名(お坊さんとしての名前)もこの方から頂けるはずだった…ところが得度を目前にした或る日、ふと父に「門跡さんがどんな名前を考えてくれるか楽しみ」と言ったら、父が「ああ、僧名は私が幾つか候補を考えて送ったから、その中から門跡さんが選んでくれるはず」と言い出した!
 
 寝耳に水とはこのこと、一体どんな名前を送ったのか控えをみると、かなりセンスが悪い!
中には「悟空」などという天竺までお経を取りに行きそうな名前まである…もし、門跡さんが気まぐれで「悟空」を選んだらどうなるか考えただけでもブルーだった。結局、センスの悪いながらもっとも無難な名前を門跡さんは授けてくれた。やはり門跡さんは偉い方だった…


 最終的にお坊さんになるには(これは宗派によってかなり差があるが)伝法灌頂(でんぽうかんじょう)という儀式が最終認可の式である。12月の寒い時期で、延べ13時間くらい正座が続くので大変である。

 但し、この伝法灌頂を受けるには加行(けぎょう)という修行過程を終了するのが条件である。私の本山では約3カ月間である。得度も灌頂が一日で終わることを思うと、やはりお坊さんになるための最大の難関はこの加行という過程をクリアできるかにかかっているといってよいかもしれない。