がんばれ!大根炊き


ウチはなぜか山寺ばかり3軒兼務している。

そのうちのあるお寺がだいこん炊き行い好評である。
お寺の会計の足しにしようと始めたの10数年前だが、以来、毎年かかさず行っている。今年も11月の日曜日を中心に5日間ほど行う。明日が最終日である。

紅葉狩りで人手の多い山寺の境内に別のお寺の一団が引っ越してきた感じである。
テントを貼り、大きな鉄釜で大根を炊く。
京都の大根炊きと言うとただ大根をお湯で煮ただけというものもあるが、ウチはしっかり味を付ける。大根の他にも油揚げ、にんじん、こんにゃく、などを入れたおでん風である。檀家さんの中でも料理上手の人が味を決めていく。販売は日曜だが前日から炊いて味を含める。家庭用の小さな鍋より大きな鉄鍋で大量に炊くほうが美味しいと言われるが、実際味が深いように思える。

毎回、20人ほどの檀家さんがお手伝いをしてくれる。
女性は料理、洗い物、掃除と手馴れた仕事をてきぱきと片付けていくが、見ていて楽しいのは男性の檀家さんである。定年を過ぎた男性が可愛いエプロンを着て働いている。年に一回の行事なので皆さんテンションが高い。そして人数は大勢居るのだが結構、無駄な動きが多い(笑)かと思うと、暇になると焚き火にあたって世間話してたり…

殆どの檀家さんが兼業農家で、サービス業には縁の無い人が多い。
自分の畑で取れた農産物を持ち寄って販売もするのだが、柚子4個100円、万願寺唐辛子1袋100円とか値段もかなりいい加減というか果たして儲かるのか疑問な値段設定である。
値札も広告の裏にかすれたマジックで「100」と書いてあるだけだったりする。離れて見てると何をやっているか分からないので、今日はあわてて墨や朱墨で大きめのPOPを作り持っていった。

お天気がよければ結構忙しいが、雨がふればさっぱりである。先日も雨が降り、寒いのと暇なので、振る舞い酒用に持ってきた1升ビンを皆で飲んで気勢を上げてました。私も無理矢理飲まされ…

お寺のために檀家さんが働いてくれるのを見ていると本当に頼もしく、嬉しく思う。
でもこうした行事が檀家さん同士の付き合いを深めていることも実感される。

全国で様々な年中行事が廃れつつある。
人手が無い、若者が居ない、後継者が育たないとよく言われる。今の若い人はそうした行事に参加すること自体が苦痛に感じる人も多いだろう。だが恐らく昔の地域の年中行事は娯楽の少なかった地域の人々にとって大きな楽しみであったと思う。

前の晩から大勢で集まって準備をする。夜になれば酒盛りである。当日は皆で一丸となって行事を行い、終わればまた酒盛り。そういった行事に参加することで一人前と認められ、大人の付き合いを覚えていく。また自分の村への愛着を深めていく。

だいこん炊きのために一生懸命働いてくれる檀家さんたちを見ているとそんな昔の村の光景をふと思った。