お寺でブートキャンプ

本山に居た頃の楽しみというと晩御飯だった。

朝食や昼食はいろいろな作法があって僧衣を着て正装して食べる。お代わりはでない。会話もできない。古いしきたりでは朝食と昼食の2食になっているが、さすがに現在は3食である。

晩御飯は後からできたものなのでそれに対応するしきたりがないようなのである。そのため、晩御飯はお代わりもできるし、会話もできる。これが嬉しかった。夕勤といって夕方のお勤めが2時間くらいあり、宿舎に帰るころにはお腹はぺこぺこである。そこに丼でご飯が出る。お腹が減っているからおかずが質素でも何を食べても美味しい。

主食は白米と麦が1対1である。これは胃にもたれないし、これをみんな丼で何杯もお代わりする。本山に修行に行く前、私の身体は体脂肪率8%、体重55キロだったのに、本山を出るころには72キロになっていた…実家の家族は本山でシゴかれてひょろひょろになって帰ってくると思っていたのに、私がそれまで見たことのないくらい太って帰ってきたのでかなり驚いたそうである。

或る日、お風呂あがりにふと自分の身体を見ていて太ももの後ろ側にセルライトが出来ているのを発見してさすがにショックだった。「痩せようっ!」とさすがに決意した。

いろいろ試行錯誤した結果、主に2つのことをやった。

ひとつはヨガである。小山一夫という人が<火の呼吸>という呼吸法をベースにしたトレーニングを提唱しておられる。これはかなりハードだが身体に効く感じがした。

もうひとつは突き、蹴り、肘打ち、膝蹴り、スクワット、四股踏み、木刀の素振り、合気道の体捌き、など武術的な動きを集めて、一人で繰り返した。BGMはいろいろ試して「ゴレンジャー」などの戦隊ものの音楽を集めたものが一番楽しくやれるということに気付いた。
後で考えるとこれは、一時期大流行したブートキャンプを先取りしたような内容であった。その結果かどうかしらないが72キロあった体重は今では60キロほどである。

この2つのトレーニングは私の経験から効果ありと断言できる。
一度、本家のブートキャンプにも挑戦してみたいものである…