「戦国の堅城   築城から読み解く戦略と戦術」

お寺の本棚

「戦国の堅城   築城から読み解く戦略と戦術」学習研究社  1900円


暫く前に新聞を読んでいたら、若い女性に戦国武将にまつわるグッズが良く売れているという報道があった。どうも戦国時代をテーマにしたゲームソフトの影響らしい。私はゲームは全然やらないのでよく分からないが面白いと思う。大体において女性は戦争、ケンカ、武道、ガンダム…など男性の熱くなるものには関心が無い人が多いからである。

先日、姫路城へ行き感動したが、その余韻に浸っていたら、「戦国の堅城   築城から読み解く戦略と戦術」(学習研究社 )という本を見つけた。 

サブタイトルはちょっと堅いが、大判のイラストを中心にしたとても愉しい本である。
ここで描かれている城とは実践的な戦闘の拠点であり、美々しい白壁や天守閣はないが脂肪の一片もない筋肉のように、敵を殺し、自分が生き残るための合理的なアイディアの結晶のような構造物である。

とにかく香川元太郎さんという方のイラストが素晴らしい!

高所から俯瞰した城の様子が徹底して緻密に描かれている。描きこまれている人間はわずか数ミリである。だが長鑓を担つぎ、鉄砲を放ち、幡指物を掲げる兵の様子が眼に浮かぶようである。戦場を小高い丘から眼下に見下ろしているようである。
そして一緒に描かれた荒涼とした冬の原野、残雪の残る早春、夏の新緑といった季節の情景もまたしみじみと美しい。

日本各地に作られた城がどのように作られ、守られ、攻められたかが様々な角度から説明されており、見て愉しめ、読んで楽しめる本である。

絵というと写実性で写真に劣るとおもわれがちだが、
こうしたイラストをみると何かを説明する上で絵の持つ力というものを実感する。
(絵の持っている<説明能力>というのは実は日本のマンガがかくも面白く、かくも日本人に愛される理由だと思っているがこの話はまたいずれ…)

こうした築城技術の盛衰と仏教は無縁ではない。
それまでは単なる自然石をおくだけのことも多かった日本人のお墓に今日のような墓石(棹石)が置かれるようになったのは江戸期からだが、これは日本全国で大規模な城郭が建設され、石の加工や流通が一般化したことと関係があるようである。
このこともいずれ調べてみたいテーマのひとつである。

寒い日にコタツに入ってみかんを食べながらこの本を手掛かりに戦国時代にトリップするのも一興ではないだろうか。