幻の雪


数日、山寺を留守にした。
帰ったら雪が積もっているかと思ったらまだであった。

帰省した晩の十二時頃、キッチンの窓から外を見ると雪が積もっている!
妻を呼んでその景色を見せると、雪の積もったお寺の景色をデジカメで撮りたいと前向きな発言…

ところが一夜明けて外を見ると、雪の痕跡などどこにもない。地面も乾いている。
毎日、お寺を手伝いに来てくれる妹にこの話をすると、月明かりを雪に間違いないと冷静な分析…しかし、夜とはいえ、夫婦揃って月明かりを雪に間違うことがあるだろうか?

高校生の頃習った、中国の詩に「寝台のそばに射す、月の明かりを見ると、まるで霜のよう」とかいう一節があったが、当時は大げさとしか思えなかった。自分がそんな体験をして初めてこの詩に実感を覚えた。ちょっと不思議な体験だった。