柿泥棒

 勝手口の外側を波板で囲って屋根を付け、簡単な水屋にしている。
 洗濯機やかまどが置いてあり、炊事や洗濯ができる。(キッチンにはガスレンジがある。念の為。) 水屋の机の上に熟した柿を一個、置いておいたら。誰かがかじった跡がある。

 しばらくすると、かじった跡がだんだん大きくなっていることに気がついた。
 どうやら動物がいるらしいが、それらしい物音を聞いたことがない。

 面白いのでそのまま置いていた。
 そのうち、屋根と壁の間にわずかな隙間があることに気付いた。どうやらそこから鳥が入ってくるらしい。

 今年は雪の降らない冬だが、それでもこの時期は餌も少ないようなので、柿はそのまま置いておくことにした。

 今日は柿の実の横に鳥の好物の栢(カヤ)の実が一粒置いてあった。
 家族の誰かが置いたらしい。多分、動物好きの父だろう。

 家の中で鳥に餌付けできるとは思わなかった…


約3名の方に好評につき小噺第三弾です。
これからはネタに困ったらこの手でいきます。「伝家の宝刀」ですな…
宇野信夫「江戸の小ばなし」文春文庫より)

    『げじげじ』

 大内の紫宸殿にげじげじが出た。公家たちがおどろき騒ぐ。一人の公家、鼻紙でそっとつまんで築地(つきじ)の外へ捨て、
「おととい参内(さんだい)」


    『ふとん』

 藁(わら)のむしろをかけて寝ている貧家の子供が、父親から、
「むしろで寝ているというな。蒲団(ふとん)をかけて寝ているというのだぞ」
 ある日、客がきて、父親と話していると、父親の顎(あご)に藁屑(わらくず)がついている。
「お父っさん、顎(あご)に蒲団(ふとん)がついてるよ」


    『さくら鯛』


 鯛の塩焼きに、殿さまは一箸つけて、
三太夫、代わりをもて」
 三太夫は困って、
「殿、お庭の桜をご覧遊ばせ。見事に咲きました」
 殿さまがそれへ眼を向けている間に、素早く鯛を裏返して、
「はい、おかわり」
 殿さま、また一箸つけて、
「かわりをもて」
 三太夫が困りきっていると、
三太夫、また桜を見ようか」