四本指の人間
大学生の頃、文化人類学者のN先生の講義を熱心に受講していた。
みかけは普通のおじいさんでとても気さくな方だったが40か国語に通じているという噂があった。まるで遠い異国を旅した旅人から土産話を聞くような素敵な講義だった。
アフリカのある地域の人にとって手の指は4本だそうである。
その地域の老若男女誰に聞いても手の指の数は4本なのである。
そこの地域の人々にとっての<腕>というのは肩から親指までで、その<腕>から私達のいう人差し指〜小指が生えているという感覚なのだそうである。
確かに、親指だけは他の4本の指と対向して動くし、他の指とは違うといえば違う。
言葉とか文化によって私達のものの見方は限定されている。
それを越えようという感覚や意識は大事だと思う。
では文化人類学やよその国の言語を学べばそれができるかというとそうではないところが難しい。
単に知識が増えても、頭でっかちになるだけのこともある。
私達の意識の根底には
<自分は絶対正しい>とか
<自分のできることはこのくらい>とか
<自分という存在はこういうものなんだ>とか
そういった根っこみたいなものがある。
それが自分を支えている部分もあるし、逆に縛っている部分もある。
それを自覚して、それを越えていこうというのが私のめざしている<深さ>という方向へつながっていると思う。ただ私達は自分を否定する(否定される)ことを無条件で拒んでしまうことも多い。それらを越えるためには気合や本気のようなものも必要になってくることもあるし、感性とか知性の世界につながってくる場合もある。
心の世界を旅することは容易ではない。
追記
それではアフリカに伝わる謎々をひとつ。
適当な遠くの方向を指差して
「あれ何だ?」
さて正解は何でしょう?