特別な日
毎年1月18日は車で30分ほど離れた漁村へ行く。
そこで御祈祷をして、その時、御祈祷に使ったお経の本を箱に入れ、裃(かみしも)を着た村の男の子が
「お経さんが入ります」
と告げて、村の家を一軒ずつ回る。
これは何百年も続いている行事である。
おそらく昔はどこの村にもこのような行事があったのだろう。
こうした古い行事が守られているのは不思議に思える。
御祈祷がすむと接待を受ける。
漁村ならではの新鮮な魚介類に加えて、その土地に伝わる家庭料理が出される。
海苔巻き、煮物、膾(「なます」野菜を豆腐で合えたもの)…中でも新鮮なわかめを生姜の汁と醤油であえたものは絶品だった…
ふだんお寺に来る農家の人たちと違って、漁師をしている人たちは体も大きくて無骨な感じがする。そんな男たちがまだ若い?私にかしこまって一生懸命もてなして下さる。すごく心が温まるもてなし方である。
漁師さんは危険なめにあうことも多いので信心深く、古い習慣を大切にする。
そんな気風から古い行事が長く守り伝えられたのだと思う。
少子化でお経を持って歩く男の子も少なくなった。
いつまでもこの行事が続くことを願わずにはいられなかった。