「最強の男」の言葉

   【山寺の本棚】「㊙牌の音ストーリーズ」全4巻 みやわき心太郎 竹書房


 昨日、駅のそばにある宮脇書店で「COMICS壁をブチ破る最強の言葉」(やわき心太郎 ゴマブックス株式会社)を見つけた。「㊙牌の音ストーリーズ」(みやわき心太郎  竹書房)の続編かと思いあわてて買ったら、内容がかなりダブってた…でもやっぱり面白い!ちゃんと新稿もはいっている。同じタイトルの単行本が既に出ていて、こちらはマンガ編である。


 「㊙牌の音ストーリーズ」は一時期ハマったマンガである。

 通っていた大学の近所に沢山の雀荘があった。
 友達を探しに雀荘に入ると、いつもゆるーい空気が漂っていた。
 くわえタバコで、腰に力の抜けたように椅子に座って卓を囲みながら「ダイヘン※よろしく」などと言う者がいたりして、麻雀にはその程度のイメージしかなかったし、麻雀のプロというのはイカサマをするのが仕事だとずーっと思ってた(笑)
                   
                ※代返 出席を取る時、代わりに返事をすること

 桜井章一という人は有名であるが、このブログを読むような方は知らないかもしれない(笑)
 麻雀のプロ、勝負師として20年間無敗の伝説を持つ人物である。

 私は自分が何かに上達し、プロになるにはその分野の技術や知識だけをひたすら磨けばいいし、自分の仕事に打ち込みさえすれば、日常が少々だらしなくてもいい、あるいはそのほうがカッコイイと思っていた。だが、この「㊙牌の音ストーリーズ」を読んで、日常のだらしなさやいいかげんさが自分の仕事ぶりに反映してくるという指摘を読んでかなりショックを受けた。自分の甘さ、傲慢さを思い知らされた…

 「常住坐臥」という言葉がある。これと同じではないかもしれないが、似た雰囲気があるし、なにより桜井氏の言葉には命がけの勝負をくぐりぬけてきた人間の持つ生身の実感がある。

 ちなみに「COMICS 壁をブチ破る最強の言葉」の章題は

 第1章 行動がおかしいのに、心が正しいということはありえるのか?
 第2章 言葉は、語らない。
第3章 「現場感覚」こそ「マニュアル」より優先される。
 第4章 変化や流れに対しては、「分析」ではなく「感じる」ほうが正解率が高い。
 第5章 「勘」に頼るなというが、「知識」より「勘」のほうがあてになる。
 第6章 「心構え」ができるには、「カラダ構え」をキチンとする。
 第7章 本当の強さは目に見えない。
 第8章 「生きる意味」は、自分のことだけを考えていては見つからない。
 第9章 ひとつのことだけにとらわれて固執すると、どんどん弱くなる。

 これらのタイトルを見て関心をもたれたら本編である「㊙牌の音ストーリーズ」を読んでみて頂きたい。「COMICS壁をブチ破る最強の言葉」のほうを初めて読むと話の流れが分かりにくいだろう。

 「㊙牌の音ストーリーズ」で語られる超絶的なプロの言葉も素晴らしいが、私は作者のみやわき心太郎氏にも惹かれる。超一流の人間に出会って感動する子供のような素直さ、それを表現できる震えるような歓び、漫画家として仕事に賭ける情熱が伝わってくる。このマンガにはプロとプロの出会いがあると思う。

 ちなみに未だに私は麻雀のルールは全く分からない(笑)
 それでも「㊙牌の音ストーリーズ」を読み返すたび感じるものがある。
 プロをめざす方には是非オススメしたい本である。