禅者のメッセージ

日本のマンガは面白い。ストーリー性のあるものだけでなく作者の体験をドキュメンタリー風に書いたのにも面白いものが多い。

小栗左多里おぐりさおり)さんの「ダーリンは外国人??」(メディアファクトリー)はかなり好きだが、この小栗さんが「精神道入門」(幻冬社)というのを書いているのを駅のそばの古本屋「復活書房」で見つけた。105円也。
瞑想、写経、座禅、滝行、断食、座禅、、内観、お遍路…作者が友人の杏子ちゃんと一緒にいろんな修行にチャレンジする。

ただ残念なのはこうした分野は指導の内容がほんとうにマチマチで、玉石混淆の世界だということである。だからここに書いてあるものを読んで「座禅とはこういうもの」とか「断食してみたい」と思うのはちょっと待った!なのである。



ちなみに座禅のところを読むと「マイ・フェイバリット坊主」とか、「警策、いっとく?」とか、座禅指導が「節約プレイ」とか、実に楽しく書いてある。(ちなみに「警策」は「きょうさく」と読み、座禅する人を打つ道具のことである)

 ひたすら楽しそうに書いてあるように見えて、こうした精神的分野の指導者への素朴な疑問、鋭い分析もある。小栗さんが子供の頃交流したすばらしいお坊さんについても。(わずか数行しか書いてないが私もとても立派な方だと感じた)


 一昨日、知人の禅僧の方に参禅したお寺の老僧について伺った。
外国からもその禅風を慕って、入門者が後を絶たないという傑僧である。

数日前にロイター通信社がわざわざ老僧の居られるお寺まで取材に訪れた。
インタビューの最後に、「世界の人に向けてメッセージをお願いします」という記者に対し、老僧は始めのうちは「何もありません」と答えられたそうだが、暫く考えて「あなたが一番尊い…ただそれだけです」と仰ったそうである。


「あなたが一番尊い

 この言葉を聞いてから一日に何度も頭の中でこの言葉を反芻している。
 言葉にならない深みがある。知人の禅僧の方は八十を越えた老僧の朴訥な口ぶりを真似てその言葉を語ってくれたのだが、心から離れない魅力を感じる。禅宗の測り知れない深さがほんの一瞬、小さな隙間から顔を覗かせたような言葉だと思った。