泣き笑い天国座


産経新聞の月曜版には「泣き笑い天国座」という連載があって楽しみにしている。
亡くなった芸人さんについてその愛弟子が語るのだがこれが面白い。
前回までは吉本の岡八郎さんについてオール阪神巨人の巨人氏が語っていた。

今日は宮川佐近ショーの宮川佐近さんについて漫才師の宮川大助氏が語っている。

宮川佐近ショーというのは私達の世代にはとても懐かしい名前である。

宮川佐近さんは天才少年浪曲師としてトリを勤めるほどの人気であったが、途中からお笑いの世界へと転向した。
一世を風靡する人気者になったが、他のメンバー2名もとても面白かった。
向かって左はいかつくて無骨なタイプで向かって右は繊細で飄々としたタイプである。
よく考えるとこれはタイムボカンシリーズに出てくる悪役三人と同じ構成である。俗にキャラが立つとよく言うが、人物のマンガ的な組み合わせが面白さを際立たせていたのだと思う。

お笑いというと軽い印象があるが、左近さんは大変な勉強家であっただけでなく、芸に打ち込む気持ちもとても強かった。浪曲からお笑いに転向する際には、成田のお不動様で10日間の断食と水行をしたという。

 昨今はお笑いブームだが、笑いの背後にそれだけの気迫を背負っている人はあまり居ないように思う。いつだったか志村けん氏が「最近の若いヤツはオンナにもてたいからお笑い芸人になる」と憤慨していた…

 左近さんの辞世の句は

         極めても極めても波打ち際の砂上の楼閣

 であった。何事にも本気で、向上心を忘れないというのは素晴らしい。

 昨日読んだ、小栗さんの「精神道入門」のように日本人の中には物事を極めようという志向がDNAのように存在しているようにも思う。
 日本人の中にあるこうした精神的伝統が文化の全ての面で日本人を底上げしていたが、最近の若者のベースにあるのはアメリカ文化になりつつある。それがどちらかというと日本の文化を<底下げ>しているのでないかと少し心配である。

 今は確か左近さんの息子さんがメンバーの一人(右側の方)と2人のコンビでやっておられる。
 天国の左近さんもきっと喜んでおられるにちがいない。