ワカメの春
暖かい日が続いて体が緩んできたのを感じる。
雨が降っても体が芯まで冷えるようなこともない。山寺の冬の寒さからようやく解放されたかと思うと有難い。
出先でテレビを見ていたら、鳴門のワカメが取り上げられていた
ワカメの本来の味を楽しむのにしゃぶしゃぶにして食べるという。
ワカメは熱湯に潜らせると、くすんだ茶色から一気に鮮やかな緑になっていた。
ナレーターは熱で茶色の色素が壊れて緑色になると説明していた。
地元でもワカメは春の味覚である。
当地では、ワカメの新芽を乾燥させてものがこの時期に売りに出される。
先日も海を見下ろす山の中に建つ立派なお寺に用事で出かけたら、このワカメの新芽を頂いたので食べるのを楽しみにしている。
乾燥させてワカメは黒褐色をしているが、フライパンを中火くらいで熱して、このワカメをあぶると鮮やかな緑色になる。
口に含むとさくさく、ほろほろと口の中で崩れる食感を味わえる。磯の香りも濃い。
味も食感も香りも全てが繊細である。
こちらで暮らすようになって初めてこのワカメの新芽を食べた時はその美味しいさに感動した。
時間が経つと柔らかくなるのでフライパンから取り出したらすぐに食べないといけない。
細かくもんで、ふりかけのように熱いご飯にふりかけたものもとても美味しい。
他に春の味覚といえばヨモギやタンポポの天ぷらがある。
これは境内に生えているのを摘んできて揚げるだけである。
やはり私にとっての春の味覚はこのワカメの新芽に尽きる。
私はとても美味しいと思うのだが、袋にはワカメの新芽などと書かれていないし、食べ方も書いてない。
地元の人はよく知っているのだが、是非、他府県の人にも知ってもらいたい味である。
当地はおみやげになるものがあまりないので、この春の味覚をもっと大勢の人に味わってもらいたいとひそかに計画している。