梅散る頃

今日は時折、雨が降る。
春になると雨まで暖かく感じるから不思議である。
松の木やもみじの梢に水滴が小さな粒になって宿っているのが綺麗である。


境内を見渡すと梅、椿、蝋梅がよく咲いている。

暫く前、つまらないことに悶々としながら道を歩いていた。
両側に塀の続く細い路地で、曲がりくねっていたのだが、不意に眼の前が開けて、満開の白梅が眼に入った。その途端、肩の力が抜けて、自分の悩みから抜け出すことが出来た。
やはり花には不思議な力がある。

犬小屋の掃除をしようとして、バケツに水を汲もうとしたら、バケツに溜まっていた水に梅の花びらが沢山浮かんでいた。良くみると花びらだけでなく、花びらが全て揃ったままの梅の花も浮かんでいた。

梅や桜の花びらが風で舞っているのはよく見るが、花がそのまま風の中を飛んでいるのを想像するのは少し新鮮だった。


春されば  まづ咲く宿の   梅の花
 独り見つつや  春日暮らさむ
                     山上憶良

膝の傷 見せてから泣く 桃の花  
           高山邦夫