破戒僧になれ?!
「がんばれ仏教! お寺ルネサンスの時代」
上田紀行 NHKブックス
知り合いのお坊さんに勧められてアマゾンで買った本である…怖い本というのに久しぶりに出遭った。
怖くて通読できないのである。ところどころ拾い読みして慌てて止め、でもまた開いて読む…そんなことばかり繰り返して、未だに読読み通していない。こんな体験は久しぶりである。
現代仏教が抱える様々な矛盾。
現代仏教の腐敗。
そして現代仏教の可能性。
要約すればこの三句に尽きる。
僧侶という職業は定年の無い仕事で、キャリア数年の私などは駆け出しの小僧さんである。
それでもこの仕事の大変さ、或いは将来性というものを考えるとかなり暗い気持ちになる。
普段よくお寺に来て下さる檀家さんは概ね60代から70代である。その子供さんというのは京阪神に居られることが多い。実家に居られても顔を合わせる機会は殆ど無い。
現役でお寺を担って下さっている世代から次の世代に同じようなお寺との関係が引き継がれるかといえば、答えは恐らくNOなのである。今、お寺を檀家さんがラスト・ゼネレーションになるというのが私の印象である。
それ以前に、そもそも私達は何ができるのか、何をしていないのかという問いも必要だろう。もちろん、一部の仏教批判には的外れな点があることも事実ではあるが。
そして私達僧侶自身も様々な危機感を持ちながらも、実に様々な理由で次の一歩を踏み出せずにいる。
タイは上座部仏教の盛んな地域であるが、僧侶は社会的なことには一切関わらず、僧院の中で生活して自身の解脱のみを目指す。
社会の為に活動しようとすれば破戒僧として扱われるという。それでも、貧困者の為に破戒僧になる人達が少なからずいる…という一節を読んで、多分、日本の仏教に欠けているのは社会への関わりではないかと改めて思った。
お寺といって千差万別だが、本気になればもっといろんなことができる。
若手のお坊さんには是非読んで欲しい本である。