持ち上がらない身体

コブシの花が数日前から一斉に咲き始めた。
コブシの花は里近くより、山の中にぽつりぽつりと咲くので遠目には山の緑の中に白いふんわりとしたものが見えるだけである。それでも丈夫な樹なのか、ひとつの山に20、30の白いコブシの樹を見ることもある。

今日は久しぶりに?大きな失敗をして、かなり暗いモードで車を運転していたら、道路の正面の山に何十ものコブシが咲いているが見えて、急に気持ちが楽になった。日々、自然に心を癒してもらえることは本当に有難い。

武道などのトレーニングで有名なものに<持ち上がらない身体>というのがある。
一人が両足をやや広げて立ち、別の二人が両側から脇に手を入れて持ち上げる。
次に身体をよくゆるめてから、もう一度同じように持ち上げようとすると身体がずっしり重くなっている。
150センチくらいの小柄な女性でも十分にゆるむと男性二人でも持ち上がらないことがある。

さて、身体がよくゆるむようになって持ち上げにくくなってから、今度は両側の二人が「せーの!」と同時に掛け声をかけて持ち上げると、さっきまで重かった身体が急に軽々と持ち上がってしまうことが多い。

これは<持ち上げられる>という意識の緊張でゆるんでいた身体が瞬時にもとに逆戻りしているからである。

私達の身体と心が常に影響しあっていることが良く分かる。
多分、心と身体を本当に一体なのだと思う。
ほんの一瞬の心の緊張や揺らぎが即座に身体に反映していることは興味深い。
小さな出来事に振り回されている自分だが、「不動心」とか「平常心」などという言葉を使うことはたやすいが、その体得は遥かな道のりである…