蛙の声 野の花

私は蛙の声がとても好きである。
今日は法事に出かけて、田んぼの脇の道を歩いていると、たくさんの蛙が鳴いていた。夏頃になると一晩中、近くの田んぼから蛙の声が木霊(こだま)するようになる。

鳴き続けている蛙の声を聞いていると、不思議に気持ちが穏やかになる。どこかユーモラスであり、また少しもの悲しくもある。

日本人はこおろぎや鈴虫などの虫の声を好むが、外国人にとって虫の声は雑音にしか聞こえないと聞いたことがある。蛙の声なども、やはり雑音としか聞こえないのかもしれない。
このまま日本人の心から情緒のようなものが失われていくと、虫や蛙の鳴き声もただの雑音に聞こえるようになってしまうとしたら寂しい話である。


花木は年によって良く花がついたり、実がなったりする。

今年は何処へ行っても水仙の花が良く咲いている。
水仙は強い芳香があり、華奢なようでいて意外に強い植物である。
先日、山奥の荒れた畑を耕しに行ったら、畑の脇に水仙が一群になって咲いていた。長い間、誰も手入れしなくなってからも子孫を増やし、咲き続けていたのだろう。

水仙に少し似た花でシャガ※という白い花がある。
竹やぶのような日当たりの悪いところでも沢山見かけるが、日当たりの良い場所にももちろん咲く。日当たりのいい場所ではシャガがもう咲き始めている。湿地を好む植物なので、山陰のこの土地の土質に合うのだと思う。
清音で読むと「しゃか」(釈迦)というのも面白い。

本堂に至る石段の両側を伐採して日当たりが良くなったら、急にシャガの花がたくさん咲くようになった。
ゴールデンウィークの頃になると、境内の斜面に数百本のシャガが咲く。今から楽しみにしている。

    野の花も 蛙の声も へだてなく  山川草木悉皆成仏


※ シャガ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%AC