大祭本番! 広島のんびり日記3

本日はいよいよ大祭本番である。

当日は全員、修験道の装束に身を包む。分かりやすく言うと山伏の格好である。
最初に88ヶ所の山歩きがある。
四国八十八ヵ所巡礼になぞらえて、お寺の周囲に八十八ヶ所の石碑を建てているお寺は沢山ある。兼務しているお寺にもあるが規模は小さく所要時間僅か30分である。

ところがこのお寺の八十八ヶ所巡りは勾配の急な山道を登ったり降りたりして所要時間4時間以上かかる本格的なものである。
山伏姿の我々に続いて信者の方が50名余りも一緒に歩いた。歩くというより登るというほうが相応しい。昨年は雨が降り、冷たい雨で身体が冷え、ぬかるんだ道に足をとられたが、
今年は快晴である。

土壌が合うのか薄紫のサツキがどこを見ても咲いている。新緑の中に剪定されていないサツキがのびのびと咲いていて美しい。

時々、見晴らしの良い場所に出ると、眼下に美しい瀬戸内の海が見える。
山すそにわずかばかりの人家があるが、広い海と点在する無数の島々。のどかで時間の止まったような風景である。

ようやく八十八ヶ所歩きを終えるとお寺の本堂で法要を行い、引き続き柴燈護摩(さいとうごま)へと続く。

私は点火の係りだった。
長い竹竿の先に細かく割った松の木の砕片が差し込んであり奉書紙で巻いて水引が掛けられている。ロウソクでこの長い松明(たいまつ)に火を付け、さらに炉に点火するのだが、勢よく松明を炉に入れたが、少し煙が出ただけで火がつかない!
焦った…かなり格好が悪い…

あわててD院のお坊さんがフォローして下さる。どうにか点火がすむと大祇師(だいぎし)のD院ご住職は粛々と作法を進めていく。
私達はひたすら錫杖(短い杖のようなもの)を振り、般若心経や真言を唱え続ける。
当日参詣された方々の健勝を念じつつ…

最後に火渡りという儀式が行われる。
炉を取り外すと真っ赤にいこった炭が沢山残っているが、この炭の上を歩いて渡るのである。先程までぶすぶすと煙が立ち、真っ赤になっていた炭の山をならして、その上を裸足で歩いていく。どう考えても熱そうだが、平気で歩けるから不思議である。私達に続いて参詣の方々も歩いて渡る。皆神妙な面持ちである。
この柴燈護摩も小さな島の年中行事としてすっかり定着しているようで、このお寺のご住職の人徳の賜物であろうと思われた。

こうしてようやく一連の行事が終わった。
後片付けもいろいろあるので帰途に付いたのは翌日で、京都市内に着いたのは日が暮れてからだったので、一緒に出かけた市内の同期生のお寺に一泊させて頂き、ようやく広島でのお手伝いを終えた。

「ではまた来年」そう言って皆と別れたが、忙しくなればこうして広島までお手伝いに行くのも難しくなる。その意味でも貴重なひと時であった。合掌