花の色は映りにけりな

先日、妻の買った雑誌を読んでいたら岸恵子さんのインタビューが載っていた。
落ち着いていて、洗練された感じがとても素敵だと思った。

10代の頃、「夕暮れて」という岸恵子さん主演のNHKドラマがあった。
子供だった私はそこに大人の世界を感じた。
細かい内容は覚えていないのだが、岸恵子さんが米倉斉加年氏と海岸を歩くシーンが強烈に印象に残っている。ネットで調べると、放送された年代は記憶していた通りだった。私はかなり忘れっぽいので20年以上経っても覚えていたということはよほど魅かれたのだと思う。

最近、自分が歳をとったせいか、若いタレントや女優さんを見て、とても子供っぽく見えてしまうことがある。もちろん若い女性が嫌いというわけではないが(笑)…
若さとか幼さは芸能界に溢れているが、落ち着いた大人の女性というのがなかなかお目にかかることが少ない気がする。
以前、武原はんさんの記念展に出かけた時に女優の藤村志保さんを会場でお見かけしたが、とても素敵だった。

歳を経て、美しく、魅力的であるというのは難しいだけに、大きな努力を払ってそれを手に入れた人達は輝いていると思う。


      
     花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに


この小野小町の歌はあまりに有名だが、ある古典の解説書には醜く老いさらばえた小野小町が悲嘆にくれているイラストが書いてあった。私にはちょっとベタすぎる感じがする…

小野小町は絶世の美人であったとされるが、やはり年を経ても、若さを越えた美しさを備えていたと思いたい。

 春雨の降る夜、、老成してもなお美しい小野小町が、若い女房達と一緒に居て、この歌を詠んだとしたら、やはりとても素敵だと想像する。
 若さに対する素直な謙遜なのか、自分への自負なのか、衰えてはいない自分の魅力を自覚しての歌だとしたら、その時の小野小町はどんな容姿だったのだろうと想像してしまう。徒に若さを揶揄したり、自分の若さを誇示したりするより、こちらのほうがよほどかっこいい。
 知性や感性というのは年齢を超えて磨くことができる。
 その意味でも古典はそのお手本を示してくれることが多い。

【追記】
 和歌については下記を参照させて頂きました。作者に御礼申し上げます。
  http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/komati.html

  ドラマ「夕暮れて」については下記をご参照下さい
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%95%E6%9A%AE%E3%82%8C%E3%81%A6