「刑事コロンボ」

 時々、昔見たアメリカのテレビドラマを懐かしく思い出す。

 筆頭は「刑事コロンボ」である。子供心に強烈な印象を受けた。
 主演のピーター・フォークを初め、視聴者には既に犯人の分かっているという独特のストーリー展開、毎回敵役となる大物俳優、小池朝雄氏の吹き替えなどいずれも素晴らしかった。
(「古畑任三郎」はとても好きなテレビシリーズだが、この「刑事コロンボ」の特徴を殆ど引き継いでいることが面白さの秘訣だろう。)

 「コロンボ」の後に「警部マクロード」「署長マクミラン」などが続いた。
「マクロード」はデニス・ウィーバーの声を吹き変えた宍戸錠氏と上司クリフォード部長役の加藤武氏の掛け合いが楽しかった。そういえば「刑事コロンボ」の奥さんが主人公となった「ミセス・コロンボ」というシリーズも何話か見た記憶がある。主演が確かケイト・マルグルー※という可愛い女優さんだったと思う。

 ちなみにコロンボの役職は警部補である。マクロードは警部ではなく保安官補というアメリカ独特の役職であり、マクミランは署長ではなくコミッショナーという日本の公安委員に近い役職らしい。日本では馴染みのないアメリカの官職については分かりやすいものに変えて訳しているようである。

 子供の頃に見たアメリカのテレビドラマは、登場人物に圧倒的な存在感があり、画面に映し出されるアメリカという国も光り輝いていたように思う。
 私は長い間、欧米文化に対する崇敬と同時に日本の固有の文化に対する、ある種の引け目のようなものがあった。
 それがこの歳になってようやくに日本の文化やアジアの古い文化が欧米のそれに決して劣るものではないことがようやく確信できるようになった。

 哲学や宗教といったアジアの精神文化の晴らしさに遅まきながら気づくことができて本当に良かったと思う。若い世代の嗜好を見ていると、アメリカの下流文化の模倣が目立つが、やはりとても残念である。

 何に憧れ、何を模範とし、何に倣うのかは個人でも、社会でもとても大切なことだろう。
 こんなことを書いていたら「刑事コロンボ」のDVDを借りたくなった…

※ケイト・マルグルーという女優さんの名前を覚えていたのは、当時、何話か見ただけのこの女優さんがとても気に入っていたからである。念のため調べてみたら「スター・トレック」シリーズで艦長役をやったこともあるとのことだった。