住職とシジミ
夕飯の時、急に住職が
「あなたたちはシジミが好きか?」と唐突に尋ねた。
全員、黙っていると
「シジミを養殖してみようかと考えている」
全員「???」である。
住職は時々、突拍子も無いことを言い始めることがある。
これまでも鹿を飼いたいとか、昆虫館を作りたいとか、干支にちなんだ動物園を作りたいとか、挙げるときりが無い。
そして時々、常人離れした実行力でこうしたプランを実行に移そうとするので家族は大変である。私がこのお寺に居ない間にモミジの苗を5000本も買って、境内の奥のほうに植えてしまった。そこは殆ど、人が行かないような場所なので、今後どうやって管理していくかが大きな課題である。
昔はわが親ながらこんな住職が理解できず随分、反発したものだった。
だが、この歳になってようやくこんな住職を魅力的だと思えるようになってきた。
住職のこんな行動を見ていると赤塚不二夫氏のマンガ「天才バカボン」を思い出す。
このマンガの主人公はバカボンではなくバカボンのパパである。
トンでもないことをする人物なのだが、どこか憎めない。
実際、住職を慕う檀家さんもとても多い。やることはヘンだが、その基本に悪意や悪気が無いからだろう。
しかも実務にかけてはきわめてソツがなく緻密である。ルーズで大雑把な私とは大違いである…
住職がバカボンのパパなら、私はバカボンということになる(笑)
マンガの中にバカボンは天才というよりかなり間抜けである。
やはりぴったりかもしれない…