非常識な代車

 田舎で重宝する車といえば軽トラックである。
 三人まで人が乗れるし、簡単に大量の物が運べるからである。檀家さんがお寺に集まると、白の軽トラックがずらーっと並ぶ…

 この軽トラックに車検の時期が来た。
 親戚の自動車工場に車検を任しているのだが、前回は代車として巨大なアメ車のような車を持ってきた。国産車でかなりプレミアがついていると言っていたが、素人目には馬鹿でかい、アメリカングラフティに出てきそうな車で、車庫には入らないし、檀家さんの家に行くのも一苦労だった…

 今回、どんな車を持ってくるかと思ったら、姫路ナンバーの黒のスカイラインである…
車高が低いので乗りにくいし、物を積むのも大変である。何故かエンジンを切っても暫くたたないと完全には止まらない。

 住職はこのスカイラインチェンソーや農機具を積んで畑に行ったりするのでかなり変である…
 丁度、甥の中学校で運動会があったので住職が見に行った。
 全校生徒10人ほどの小さな学校で、運動会と地域の農閑期のレクリエーションが一体になっている。 全員が顔見知りというような和やかな会場へ、いきなり真っ黒のスカイラインが入ってきて、しかも痩せこけた年寄りが中から出てきたのでかなり話題になったそうである(笑)

 「梅雨」いう言葉には梅という文字が入っているが、山寺にとっては正に梅の収穫の時期である。
 ごく青い梅はジューサーでジュースを絞ったものを煮詰めて梅肉エキスにする。それが終わるといよいよ本格的に梅干作りである。
 ガレージが収穫した梅で一杯になり、甘酸っぱい匂いで満たされるのももうすぐである。
 ただ、そのためにも軽トラックに帰ってくるのが待ちどうしい…