ささのは  さらさら

 いよいよ梅の収穫の時期になった。
 数日前、妹夫婦が梅の収穫を手伝いに来てくれた。

 妹の子供が通っている保育園から電話があり、子供が熱を出しているので迎えに来てほしいと連絡があった。妹達は手が離せなかったので、代わりに私が保育園に迎えに行くことになった。

 保育園につくと保母さん(「保育士」という言い方は好きではない)が三歳の姪を連れて来てくれた。

 いつもは元気いっぱいでおしゃべりなのにどこかぼんやりした表情である。熱が38度8分もあるという。

 姪を車に乗せて暫くすると、姪が不意に歌を歌いだした。
 小さな、弱弱しい声で「たなばたさま」を歌はじめた。

 

ささの葉さらさら
 のきばにゆれる
 お星さまきらきら
 きんぎん砂子(すなご)

 
保育園で教わったのだろう。
 大人になると童謡を聴く機会もないが、久しぶりに聞いていい歌だと思った。

 一番の歌詞のサ行とカ行の音の組み合わせが絶妙である。
 1行目がいい。「ささの葉さらさら」…このフレーズが心地良いし、色とりどりの短冊がゆれているのが眼に浮かぶ。「さらさら」「きらきら」「きんぎん」などの言葉の選び方も美しい。

 歌い方があまりに弱弱しい感じがしたので、元気の出る歌を歌わせようと思った。
 この姪は「プリキュア」というアニメが大好きである。5人のヒロインが悪と戦うセイラームーン系の人気アニメである。

 「プリキュア」の歌を歌ってほしいと言うと、さっきより少し力のこもった声でアニメのテーマソングを歌いだした。言葉もはっきりと歌い始めた。
 不思議なことに歌っているうちにどんどん元気が戻ってきた。

 車が山寺に着く頃にはいつもの80%くらいの元気を取り戻していた。
 つくづく子供の気力や体力というのは不思議だなと思った。
 もちろん姪は今はすっかり元気である。
 もうすぐ七夕である。






「たなばたさま」 権藤はなよ/林柳波作詞・下総皖一作曲


 
    ささの葉さらさら
   のきばにゆれる
   お星さまきらきら
   きんぎん砂子(すなご)

   

五しきのたんざく
   わたしがかいた
   お星さまきらきら
   空からみてる