ウバユリの頃


数日前、神戸のYさんという方がお寺に来られた。

この方は4年あまり私どもの霊場会を撮影しておられ、霊場会の各お寺を訪れた回数も数百回は下らない。NHKなどの放送局に提供された霊場会の映像はおそらく200本に近い。

今回は境内に咲いているウバユリの撮影が目的とのことだった。
ウバユリというのはそれほど美麗ではないが、境内のあちこちにすっくりと立ち上がっている姿には独特の存在感がある。花の咲く前に葉が枯れるのが特徴で、枯れた葉と白い花のコントラストは味わいがある。

 Y さんは私のブログを毎回のように読んで下さっていて、とりわけアニメやマンガについて話が弾んだ。Yさんは私と同年代(やや年長)だが、やはり私達はアニメやマンガから強い影響を受けた世代といえるだろう。とても愉しい時間だった。


 数百回もお寺を巡って撮影を続けられるというのは並々ならぬ情熱である。
 この方とお話しているといつも感じるのは、その情熱の奥に<何かを求めておられる>ということである。

 私達は多くの場合いろんな理由で自分の心や体の声に耳を傾けなくなっていると思うことが多い。Yさんのような芸術や美術に携わる人達の中にはこうした心の声に素直に生きている人たちが少なからずいるのではないかと思う。

 私達は心や体が求めているものを無視したり、或いは心や体が拒絶していることを敢て行い続けたり。その齟齬は、心身に様々なツケをもたらすことが多い。それは病気、無気力、感情の爆発などマイナスの結果をもたらすことが多い。

 時には自分の心や体の声に真剣に耳を傾けるという体験も必要だと思う。
 
 そのためには自然の中に身を置くというのもひとつの方法だと思う。
 自然の中に佇んで、五感を開いたとき、自分の内面の中に何かが見つかるかもしれない。

 いつかYさんがご自身の求めておられる何かに邂逅されることを願っている。

 【追記】
 先ほどNHKの京都局から電話があり、本日の6時台にYさんの提供された境内のウバユリの映像が流されるとの報告があった。放送エリアは京都府下全域とのことだった。