炎暑に涼風の立つ
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近年、格別に夏が暑くなった。
お盆というお寺の一番忙しい時期に炎暑が重なるとお坊さんはなかなか大変である。
この時期に重宝するのが腕貫(うでぬき)である。
腕貫というのは籐を円筒に編んだものである。
これを上腕にはめると白衣が肌に付かないので身体が動くと風が入ってくる。白衣が汗で肌に貼りつくこともない。体感温度でかなり涼しく感じる。暑い時は袖から入る僅かな風も有難いものである。
お坊さん向けのカタログを見ると、籐で編んだベストのようなものまで売っている。
白衣の下にこれを着ると涼しいということなのだろうが、普段痩せてたお坊さんがいきなり胸板が厚くなったりしたら変であるので、さすがに買う気にはなれない。
明日から本格的に棚経が始まる。
昔は今日のような立派なお仏壇が無かった。
その代わり昔はお盆になるとどの家も縁側に精霊棚というものを設けていて、これで祖先の霊を供養していた。
檀家さんの家々を回って縁側で精霊棚を拝んだのが棚経の始まりである。
昔のお坊さんは歩いてこの棚経を行っていたのだから、車で回っていて暑いなどと文句を言うとバチが当たるかもしれない。
今日の棚経は家にあるお仏壇を拝む。
読経を終えて後ろを振り返ると、お年寄りや子供さんが団扇であおいでくださっている時がある。これは嬉しいものである。言葉どおり「有難い」と感じる。
当地ではお坊さんが家に入る時は玄関から上がらず、縁側から家に上がるのが古くからの慣わしである。
祖先の霊は縁側から家に帰ってくると考えられていたようである。だからこそ縁側に精霊棚を作って迎えたのだろう。
縁側の踏み石や敷石に打ち水が打ってあることがある。
これもとても嬉しいものである。気持ちが清々(きよぎよ)しくなる。
炎暑の中ではクーラーの与えてくれる涼風は有難いものだが、団扇の風や打ち水にはまた別の味わいがある。
清涼感は心で感じるものだとしたら、その心を忘れないようにしたい。