お盆過ぎ
檀家さんの家々を回る棚経の頃、突然に秋を感じることがあった。
気温がさして低くなった訳でもない。日中は40度近い猛暑なのだが、夕暮れになると、時々、秋の到来が感じられる。少し不思議な体験である。
そして今日の日暮れになって突然、一気に気温が下がり始めた。正に秋の訪れに相応しい空気になった。
最初は眼にも見えず、肌にも感じられず秋の来たことだけが感じられ、やがて風や空気の中に如実に感じられるのは面白いと思った。
今日は兼務している山寺で祖父母の法事を行った。
30人近い親戚が集まったが、こうして親戚があつまる機会はめったに無いことなので愉しかった。
年季の法事といってもいろいろあるが、故人となって何十年も過ぎると、悲しさよりも懐かしさを感じられることが多い。
法事を通じて人のつながりを確かめ、またつながりが一層深いものになる。
法事というのはいいものだと思った。
昼食を摂った後、庫裏の窓を開け放して、思い思いに昼寝をした。
この山寺は標高が三百メートルほどあるので風が心地よい。
畳の上で秋の気配を含む風に吹かれた昼寝は真に気持ち良かった。
秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行