大切な風景 

 

今日は昨日に続いてお盆休みである。

神奈川にいる私と妻の共通の友人がわざわざ遊びに来てくれた。

私達一押しの眺望ポイント五老岳へ最初に案内する予定だったのだが、朝から土砂降りである…
前回、別の友人を案内した時は曇っていて視界が真っ白だった。今回も失敗かと思いきや友人の到着する昼前に突然晴れ始めた。念の為、電話で確認してから五老岳に登ると、雲は多いものの海の中に小島や半島の浮かぶ景色を堪能できた。
五老岳は快晴の景色も素晴らしいが、雲が動くと、海の色や木々の色合いが刻々と変化して面白いことに気がついた。


夕食は福井県にある海辺のレストラン「ラ・イルマーレ」へ。
ここは店の前がすぐ海岸線になっていて、日本海が見渡せる。
若狭富士と讃えられる青葉山が秀麗に聳(そび)えていた。

 メニューを選ぶときうっかりして全てトマト味の料理をオーダーしてしまった。
 トマト味のピザ2種類、トマト味のパスタ、トマトソースを掛けたライスコロッケ…

 イタリア料理を食べる時にありがちなのが全部の料理がトマト味になってしまうことである。トマト系のピザを頼むのならパスタをクリーム系にするとか誰かが全体の組み立てを考えないといけない。(私は鍋奉行になぞらえてイタ飯奉行と呼んでいる…)


 夕食に出かける前に庫裏で友人といろいろ話しをした。
 なかなかゆっくり話す機会もないので家族のこと、子供の頃のこと、仕事のことなどいろいろ話ができて楽しかった。

 この友人がこちらに来る前に、当地で何がしたいかと尋ねたところヒグラシの声を聞いてのんびりしたいというリクエストを受けた。友人によれば子供の頃、田舎で聞いたヒグラシの声が忘れられないとのことだった。
 庫裏で話していて、夕方5時を回った頃からヒグラシが鳴き始めた。

 ヒグラシの声を聞くとしみじみと夏の夕暮れを感じる。
 本山に居た頃、夕方の勤行を終えて宿舎に帰る頃、このヒグラシの声を聞いたことをふと思い出した。

 子供の頃の風景はその人の原風景として永く保存される。
 その原風景は常に私達の中にあり、私達を支えてくれる存在である。
 友人の話を聞いて自分の原風景は何だろうか?と考えてみた。
 やはり私にとっても子供の頃過ごした山寺の記憶のような気がした。

 原風景に豊かな自然や優しい家族の居ることは幸せなことである。
 私は自分の原風景を正確には思い出せないのだがが、私もきっとその風景を心のどこかで求めているに違いない。