「妖婆  死棺の呪い」

  【山寺のホラー談義】

 「妖婆  死棺の呪い」は1967年に製作されたソ連映画である。
 小学生の頃だったと思うが(もしかしたら中学生かもしれない)テレビで放映されたのを観て強烈な印象を受けた。大学生の時、ロシア文学の講義中になぜかこの映画が放映されたので2回この映画を観たことになる。

 若き神学生が夭逝した地主の娘の為に3日間の祈祷を依頼されるのだが、夜になると亡くなった若い娘が蘇り、魔女と化したこの娘が神学生に襲い掛かる。

 神学生の周りには結界のようなものが張られていて、容易には近づけない。
 棺桶に乗って空中に浮かび上がった魔女(かなり綺麗な女優さんである)が眼に見えない結界に向かって何度もぶち当たって結界を破ろうとするシーンが凄かった!力業でごっつんごっつんとぶつかってくるのが日本の幽霊にない大迫力でした。
 大勢の魑魅魍魎みたいなのが出てきたり、どこか水木しげるの妖怪世界に通じるものがあった。

 芳崎せいむ氏のマンガに「テレキネシス」(小学館)という作品がある。
 映画を題材にした素敵なマンガである。実際に見たくなる過去の名画・傑作が登場人物の人生に重ねて語られる。ちなみにSF作品を思わせるタイトルは作中に出てくる「山手テレビキネマ室」という試写室の名前から取られている。
 この「妖婆  死棺の呪い」は第一話の中で「カルトな人気作品」として触れられていた。かなり有名な作品らしい。

 小中学生というのは怖い話が大好きである。
 レンタルショップに行くと、中学生くらいの子供が嬉々としてホラー映画を借りているのをみかけることもある。
 私も子供の頃はとても臆病だったが、それでも目に見えない世界、この世ならぬ存在に魅かれた。
 私がお坊さんという職業についたのもその感覚の延長かもしれない。