0.1秒で人生が変わる!

      【山寺の本棚】

 自然というのは毎年のように微妙な変化がある。

 例えば周囲の風景が毎年のように変わる。
 その年度によって特定の花木が繁茂するからである。
 花がつくとその色合いが映えるのでそのことを実感できる。今年はあちこちに白い山百合が沢山咲いていて良く目立つ。
 白い、大きな花が風に揺れているのは心を魅かれる風景である。

 最近、困っているのはやたらと虻(あぶ)が多いこと。異常発生に近い。
 先日も妻が刺されて半泣きだった…

 お盆が終わってからやたらとマンガと新書を読み始めた。
 今年のお盆は大変だったのでその反動と眼精疲労を取ってくれるアイズワイズ気功※のお陰である。

 
 昨日読んだのは茂木健一郎氏の「ひらめき脳」(新潮新書

 気鋭の脳科学者が<ひらめき>をテーマに最新の脳科学の話題に触れながら、それでいて愉しく、分かりやすい。

 「0.1秒で人生が変わる!」とは本書に帯に書かれていた言葉である。
 本書の中で気になった話題を2つだけ取り上げてみる。

 「脳の9割は眠っている」という通説は実は間違いなのだそうである。これはかなり驚き!
 脳の神経細胞は「ニューロン」と「グリア」の2種類である。
 グリアはニューロンの10倍の量があるが、その働きは長らく不明だった。このことがいつの間にか「脳の9割は眠っていて死ぬまで使われない」という伝説を生んだそうである。
 実際には一見、地味に見えるグリアが脳の働きにとても重要な役割を果たしていることが分かってきたという。

 もうひとつ面白いと思ったのは<セレンディピティ>というお話。最近、脳科学の研究で注目されている概念なのだそうである。
これは何と「思わぬ幸運に偶然出会う能力」と訳されるのだそうである。面白い!

 ノーベル賞を取るような科学史上に残るような偉大な発見には殆んどこの <セレンディピティ>が関わっているのだという。

 この<セレンディピティ>をめぐるお話はいろんなことを思い起こさせてくれる。
 たとえばこの<セレンディピティ> に恵まれるためには十分は準備や努力が積み上げられてところにこの能力が関わってくるというのである。

 私達凡人はついつい棚からボタ餅を願ってしまう悪い癖がある。努力しないと良い結果は得られないのである。
 茂木氏はパスツールの「幸運は準備のできたものに見方する」という言葉を紹介しておられるが、私が思いおこしたのは「陰徳あれば陽報あり」という言葉である。

 お寺に祈願に来る人の中には努力もしないで「願いごとをかなえてください!」と御参りにくる人があるか、この「ひらめき脳」を読ませてあげたい(笑)

 やや余談だが、この2つの話題のところを読んで<陰と陽>について考えた。
 陰と陽というとマイナスとプラスのような2極のイメージが強いが、私が思い浮かべたのは、水の中に大きな氷が浮かんでいて、水面に出た部分が陽で水面下のより大きな部分が陰というもの。陰は目に見えないが、眼に見える陽を圧倒的な存在感で支えている…

 もちろんこの場合の陰とは神経細胞におけるグリアであり、<セレンディピティ>を生むための大いなる努力である。
 こうしたちょっとしたひらめき?が生まれるのもこの本のご利益かもしれない…

 脳科学というのは目が離せない分野だが、愉しく、分かりやすい本というのはなかなか出合えない。この本は素敵な出逢いだったと思う。



 【追記】
 茂木健一郎氏のブログを発見したのでこちらも覗かれてはいかがでしょうか?
 
    http://www.kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/


   ※ アイズワイズ気功教室 気の世界
      http://www.kinosekai.jp/