雨の山寺

Yahooのニュースを見ていたら、副住職がお寺の押入れにできたスズメバチの巣を焼こうとしたらスズメバチの逆襲を受け、お寺が全焼してしまったというニュースを見つけた。気をつけねば…

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080903-00000102-jij-soci

山寺というのは自然と隣接しているので都会では考えられないようのことも起こるのである。

一昨日も夕暮れになったので住職が台所兼食堂の電灯を点けようとして、電灯の紐を引っ張ったら、紐にアシナガバチが止まっていて、手を刺されたそうである。アシナガバチは私も刺されたことがあるが結構痛い。住職はキンカンを塗っただけで済ませたそうである。やっぱり丈夫らしい…


 昨日から断続的に雨が強く降った。落雷で停電も起こったが、大きな被害がおこるほどの雨量でなかったのは幸いだった。
雨の切れ間に外へ出ると、カタツムリくらいしか生き物を見かけないが、日が暮れると秋の虫が鳴き始めた。

 この時期、虫の声を聞いていると、心が静まるような、あるいは寂しさや悲しさの混じった不思議な気持ちが湧いてくることがある。

 やはり秋の虫の声というのは日本人の感性を刺激するのだろう。
 とりわけ夏の終わりに聞く秋の虫の声は諸行無常という言葉を連想させる。

 現代人の心というのはパソコンでいえば次々とウインドウを開き、様々なことを平行して、際限なく処理し続けているようなものではないかと思う。

 心を静めるというのは、開いているウインドウをひとつずつ閉じていく作業のようなものだと思っている。その先には座禅や瞑想もあると思うのだが、自然の移り変わりに眼を向け、耳を傾けるだけでも心を静める手がかりになると思う。

 雨で境内を流れる川の水が増した。
 水音がかなり大きく聞こえるが、川の水音にも心を引かれる。

 庫裏から少し離れたところに昔は仏像を収めてあった建物があり、今は物置になっている。
私の本やマンガも沢山置いてあるのだが、夕方、荷物を取りに行ったときにふと、とみ新蔵氏の「柳生兵庫助」(リイド社)※が眼について、手に取った。
 3巻の冒頭で、兵庫助が師である石舟斎と山へ分け入り、流派の継承を告げられる場面がある。
見開き2ページを使って、川を挟んで対峙する二人が描かれていて、その絵に何となく作者の気合のようなものを感じた。川幅は広くないが、流れが速く、岩場が連なっている。剣術の奥義を究めた老剣士石舟斎と気鋭の若侍が無言で向かい合っている場面である。その絵を見ているとちょうど水かさを増した川の音が急にはっきりと聞こえてきて、少し不思議な錯覚を覚えた。

 明日は雨も上がる様子である。多分、草刈の一日である。

※剣道を始め武道の造詣の深い津本陽氏が原作を書かれ、武術系の描写では屈指のとみ新蔵氏が作画。同じコンビによる「薩南示現流」(リイド社)もハイレベルな剣術マンガである。

とみ新蔵先生のブログ】http://hiratomi.exblog.jp/i0/