山寺の迷惑な隣人

 昨晩、寝る前に妻と話していると、ズボンの中に何やら違和感を感じた…
 暫くして今度ははっきりと触覚のようなものが足の皮膚に触れた感じがしたので慌ててズボンを脱いだ。ズボンの中から体長20センチはあるムカデが這い出してきた…
 枕元にあった女性誌で叩き潰そうとすると妻が「その雑誌は美容院に持って行くから使わないで!」と止められ、ひるんだ隙にムカデはするすると障子の下に入ってしまった。
 ムカデというのは大きな身体をしていても細い隙間に入る能力に長けていて、畳に隙間や締め切った襖の間から出入りできるので神出鬼没である。妻は私がガバッと起き上がっていきなりズボンを脱ぎ始めたのでかなり驚いたらしい(笑)

 翌朝、目覚めて布団の中でまどろんでいるとサラサラというムカデの足音が聞こえた。
 枕元に眼をやると昨日のムカデが這っていたので、今度は枕元においてあったとみ新蔵先生の漫画「柳生兵庫助」(リイド社)で叩き潰した。

 台所の窓際に紫色のブッドレアが咲いている。
 1年かけてようやく1メートルほどに育てたのだが、今日見たら、大きな幹が1本倒れている。
 茎の根元に蟻が巣を作っていたのである。ブッドレアはかなり丈夫な植物で花期も長いのだが、蟻には勝てなかったらしい。境内のモミジやサルスベリや柳も随分蟻の被害にあっている。

 よく見ると、ブッドレアの根株の脇に住職が古いモミジの倒木を積んでいて、どうやら蟻で枯れたモミジからブッドレアに蟻が移動してきたように思われた。
 腹立たしいのでチェンソーでモミジの倒木を刻んで薪にした。ところがチェンソーの歯の回転で木屑が勢いよく飛び散る時にアリも一緒に飛んできて私の服の中に入り、体中を咬まれてしまった。

 山寺には迷惑な隣人が沢山居るのである。やれやれ…