77年ぶりの御開帳

   曼珠沙華散るや赤きに耐えかねて    野見山朱鳥

 今日は雨時々くもり。不順な天候だった。

 この時期、曼珠沙華が群れて咲いているが、ふだん見るくっきりした赤い色が雨あがりには白っぽく見える。
 どうやら花に水滴が付いて、日光を反射するのでそのように見えるらしいのだが、自然は微妙に形や色を変えるので面白い。

 明日からはめっきり寒くなるとのこと。
 雨と一緒に夏の暑さの名残も流れ去っていくようである。

 日本最古の霊場とも言われる西国観音霊場では1千年を超える長い歴史のなかで初めての総開帳(結縁御開帳)が行われている。霊場の全ての寺院で本尊の御開帳が執り行われるのである。

  【西国観音霊場の結縁御開帳※】http://www.saikoku33.gr.jp/open/

 山寺から車で10分の松尾寺(まつのおでら)でも10月1日から77年ぶりのご開帳が行われることになった。松尾寺は真言宗醍醐派名刹である。私達の兼務しているのは真言宗東寺派真言宗御室派のお寺だが同じ真言宗の寺院として親しくお付き合い頂いている。

 ウチの住職は先日より法要準備のお手伝いに奔走中である。私は宗派の中で一番下っ端なので言われたことをやるだけの立場ではあるが…

 さすが大寺というべきかいつの間にかHPまで立ち上がっているし、ご本尊の馬頭観音様をかたどったキャラクターまで作られている。キャラクターの名前は募集中とのこと。(採用されると1万円分の商品券がもらえるそうなので私もこっそり応募しようかと思っている…)

   【松尾寺のHP】http://www.matsunoodera.com/

 松尾寺の本堂は地域の寺院の中でも屈指の威容を誇っていて、壮大かつ秀麗な屋根の形をしている。この本堂だけでも一見の価値ありである。(余談だが渋い青緑の色といい、屋根の勾配といい機動戦士ガンダムに出てくる最強のモビルアーマービグ・ザム”に良く似ている)

 西国観音霊場は全国に知られた霊場会であり、七十七年ぶりのご開帳となれば一生に一度しか拝観できないわけだから大変な混雑が予想される。一体、どんな事態が起こるか想像もできない。

 9月30日に本尊開扉法要と宝物殿落慶法要が開かれて本尊の御開帳が執り行われ、10月1日に多くの来賓を招いて松尾寺開創千三百年記念御本尊開帳法要が行われる。

 例えば近隣のお坊さんを招待するとして、その方々にどのような順序で座って頂くか?というようなことだけでも侃々諤々(かんかんがくがく)の議論になったりする。

 僧階(お坊さんの位)、寺格(お寺の格式)、年齢、地元の仏教会での役職などなどを勘案しなくてはならない…例えばお寺の格式が高くても若い副住職が出席したらどうなるのか?とかが問題になるし、しかも大勢のお坊さんが異なる宗派にわたっていると、何がなんだか分からなくなってくる。

 というわけで法要の準備を手伝う住職は相当大変そうである…

 お寺にとっては日々のお勤めや年中行事も大切だが、こうした大規模な法要というのはお寺の歴史に新しい1ページを書き加えるわけなのでとても大切である。成功裏に終われば末永く地域の人々の語り草となるだろう。

 つつがなく法要がとりおこなわれますようにと祈っている次第である。


 ※西国観音霊場の結縁御開帳についてはお寺の事情により日程に変更の可能性があるので、拝観の前に直接お寺に確認するほうが良いとのことである。