四天王寺にて


本日は大阪の四天王寺へ。

このお寺は私の大好きな落語である松福亭松鶴の「天王寺参り」の舞台でもあり、よく整備された境内には参詣が絶えない。



兼務しているお寺の入っている霊場会「西国薬師霊場会」の結成20年を記念した講演会と公開シンポジュウムが行われた。

講演は浄土宗僧侶であり、内科医でもある与芝真彰氏が「医療現場から見た我が国医療の問題点」という内容でお話された。

抽象的なお話かと思ったら、英米の医療制度の破綻から日本の医療の問題点まで膨大なスライドを使って懇切にお話いただいた。

ニューヨークで盲腸の手術をしようと思ったら260万円くらいかかるそうである。(日本では20万くらい)
国民皆保険の制度の無いアメリカではこうした医療の高額化で中産階級が経済的に破綻し、医療を受けられる高所得者層と医療を受けられない低所得者層にはっきり分かれつつあるという。

日本で進められている医療における市場原理の導入や医療費に対する国庫負担の削減は日本の医療がアメリカのそれに近づく危険をはらむものである。

アメリカでは代替医療が盛んで、国民が医療制度に支払う金額と代替医療に費やす金額が拮抗しているといわれるが、アメリカの医療が代替医療や予防医療にシフトしつつある背後にはこうしたアメリカの医療制度の深刻な問題があるようである。

救急車の利用が無料なのは世界で日本だけだが、救急車をタクシー代わりに安易に利用するなど利用者のモラルの低下が大きな問題になっている。或いは安易な医療訴訟の頻発など社会全体のモラルの低下が医療制度の根幹を揺るがしているというお話がとても心に響いた。

これからの宗教の役割として倫理や道徳を社会に広めることがとても大切だと思っているが、今回のお話はとても刺激を受ける内容だった。

6世紀末に聖徳太子によって建立された四天王寺は日本仏教発祥の地ともいわれる。
伝承によれば四天王寺には施薬院や療病院という医療施設、悲田院という病者や身寄りのない者のための福祉施設備わっていたそうである。

仏教が早くから社会の弱者救済を掲げていたことは忘れてはならないと思う。
今日の四天王寺は今も病院、学校、福祉施設などを保有し、古(いにしえ)の姿を今に伝えているように感じた。