寒い日のご馳走

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 朝晩めっきり寒くなった。

 昨晩、妻はあまりに寒いし、おまけに秋の虫があんまり大きな声で聞こえるので、窓が開いているのではないかと思ってわざわざ調べに行ったとのこと。

 これからの季節でご馳走は温かいお風呂である。

 薪で焚いたお風呂は身体の芯まで暖まる感じがする。
 たまにホテルに泊まって、ボイラーで暖めたお湯につかると、肌の表面だけがぴりぴりしたような感覚を受ける。やはり何かが違うのだろう。

 昨日は一日中小雨が降っていたので、冷たい雨が屋根を叩く音を聞きながら、浴槽にゆっくり浸かるのはとても心地良かった。

 本山に居た頃は楽しみといえば、食事の時間、同期生との他愛ないおしゃべり、そしてお風呂の時間だった。三人も入ると一杯になるようなステンレスの湯船だったが、お風呂に入ると一日の疲れがすーっと取れる気がした。

 私の住む舞鶴は引き上げの港として知られているが、シベリアに抑留された方も大勢引き上げてこられた。

 極寒のシベリアでは殆んど入浴が許されず、まれに入浴があっても一人あたり洗面器一杯のお湯しか支給されなかったと聞いたことがある。想像を絶する過酷な世界である。

 シベリアには200万人を超える日独の大勢の将兵が抑留されたうえ、強制労働させられた。
 マッチ箱ほどの黒パンと塩味のスープしか支給されずに、極寒の地で厳しい重労働を課せられたという。これはソ連という国家の行った明白で、巨大な犯罪行為である。

 日本の一部のマスコミというのは、日本軍の行った行為については厳しく責任を問うのに、外国が日本人に為した違法な行為は黙認するという傾向がある。

 シベリア抑留についてもソ連を非難するどころか、放置した日本政府の棄民的政策による…などといって日本政府を非難する人達までいるがどうも理解に苦しむ。北朝鮮による拉致が長く放置されたように、日本の対外的な姿勢には多いに問題があるが、シベリア抑留の加害者はソ連であり、日本人は被害者である。

 一杯の白湯も温かいお風呂も与えられずに大勢の日本人が故郷の土を踏むことを願いながら果たせなかったことを忘れてはならないと思う。