法要に出仕(しゅっし)せり

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      山寺のHP更新致しました。
      宜しければ御笑覧下さいませ
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      舎利子みよ空即是色花ざかり


 
 本日は西国観音霊場の29番札所松尾寺(まつのおでら)で行われた開創1300年記念ならびに77年ぶりの開帳法要が行われた。同じ真言僧侶の一人として私も出仕(参加)させて頂いた。

法要の中心は声明(しょうみょう)と呼ばれる仏教音楽と読経である。
真言宗ではお坊さんを浅臈(せんろう)と上臈(じょうろう)に分けることが多い。
経験の浅い若いお坊さんが浅臈で年配の上位のお坊さんが上臈である。
そして法要では浅臈が法要の最初に発声することになっている。
ちなみに本日参加したお坊さんの中では私が一番の浅臈である。

本日は極めて大規模な法要で、市内だけでなく隣県や隣市からも大勢の僧侶が集まっている。来賓にいたっては全国各地から来られているのである。緊張みなぎる空間を破って最初に発声するわけであるから結構、度胸が入る。さすがに心臓がドキドキした。

何とか大役を果たせたが、法要の後は市内のホテルで祝宴もあり、山寺に帰ったのは夕方だった。 
本日は妻もお手伝いに来ていたのだが、私の声明を聞いていたら私の緊張が伝わってきて自分もドキドキしたとのこと。住職も上臈の一人として参加していたがさすがにお疲れの様子だった。

会所(えしょ)といってお坊さんが集まる場所から一列もしくは二列で行進して本堂など法要の行われる場所に行ってお勤めをし、再び会所に帰ってくるまでが法要の一連の流れである。進列を作って進む時、行きは浅臈が先頭で帰りは上臈が先頭になることが多い。

本日も雅楽隊を先頭に僧侶の列の一番前を私が歩いた。
花籠(けこ)といって透かし彫りをした金属の器に散華(さんげ)という紙製の花びらをかたどったものを入れ、この散華を撒きながら行列が進む。こうした大掛かりな法要は数ある仏教の行事の中でも一番華やいだものであろう。

本山での修行時代にも数々の法要に参加したが我々修行僧が一番の浅臈であるから、私達が行列の先頭になる。
或る日私が行列の一番先頭になったことがあった。
その日は長時間の法要で正座が楽なようにいつもより一回り大きな足袋を履くことにした。
会所に集まって正座した後、立ち上がって先頭を歩こうとしたとき、足袋のコハゼ(留め金)がばらばらと外れた…サイズが大きすぎたために、コハゼが緩んだのだった。進列が始まっているのに「すいません足袋履きなおします…」とは絶対言えない空気である。
何しろ門跡さん(本山で一番偉い方)をはじめ、こわーい上臈が何十人集まっているのである。仕方なくそのまま歩き出した。

修行僧の頃は服装や姿勢、歩き方、話し方など常に「威儀を正す」ことを叩きこまれる。
 一番下っ端の修行僧の分際で足袋のコハゼの外れただらしない格好で晴れの法要の先頭を歩いたらどうなるか…結果は想像に難くない。後でエライ怒られた…こんな失敗を何度も繰り返して少しづつ上臈と呼ばれるようになるわけである。