「スターウォーズ」と「死者の書」


 「スターウォーズ」の出てくるジュダイの騎士はフォース(「理力」とも呼ばれる)という不思議な力をその根源としている。私は長い間このフォースとは東洋的な<気>の力をヒントにして創作されたのだと思っていた。

 ところが最近、寝る前にパラ読みしている「チベット死者の書 仏典に秘められた死と転生」(NHK出版)によれば「スターウォーズ」に描かれるフォースとはチベット仏教の教義を元に作られているのではないかと書かれていてとてもおもしろく思った。

 この「チベット死者の書 仏典に秘められた死と転生」は1993年に出版されたが、今読んでもとても刺激を受ける内容である。

 本書は単なる「死者の書」の解説本ではない。

 93年にNHKで放映されたドキュメンタリードラマを紙上に再現した内容になっているのである。
チベットでの詳細な現地取材、ダライ・ラマ法王へのインタビュー、「死者の書」がアメリカでどのように読まれているかなど、「死者の書」を広く、深く掘り下げた内容となっているのである。
 私達凡人は神秘的なもの、特殊なものに惹かれる傾向がある。本書をはじめとするチベット仏教及び「死者の書」への理解には一定の批判も存在することは知っておいていいだろう。
                 http://page.freett.com/mishima/tibetph1.htm

 だが「死者の書」の存在は我々の心を強く刺激する。

 日本では人が亡くなると枕経といって自宅に搬送された遺体を拝むことが多い。
 亡くなられて間もない方を前に読経するというのは心を強くしないくてはできないものである。私自身どのようにして枕経を行うべきか戸惑うことも少なくない。

 今日、病院で行われる延命措置とは人間の生理機能を機械によって強制的に継続しているだけに過ぎないのではないかと思うことがある。
 人は必ず死ぬという問題について、私達は平素殆ど考えることをしない。
 死という必然の問題を覆い隠して生きている私達に対して、「死者の書」は大きな波紋を投げかけるようなインパクトを持っている。

 本書の冒頭には何枚かの写真が添えられているが、防寒用の帽子を被った老人の写真がある。
 その帽子の耳当の形が「スターウォーズ」に出てくる偉大なるジュダイの騎士ヨーダの耳にそっくりなのに気がついた。
 やはり「スターウォーズ」の根底にはチベット仏教の影響があるのかもしれない。