10×2の恐怖

 本日は西国観音霊場札所である松尾寺にて年に一度の大祭が行われた。
 私の役どころは宝弓師といって四方、中央、鬼門に6本の矢を放って邪を払う役割である。

 早朝、最後の準備の為に境内に行くと小雨が降り始めた。
 海抜は200メートルほどだが、山の上は天候がすぐに変わる。急に曇ったかと思うとたちまち雨が降るのである。雨が降ると行事に支障がでるが、曇りや晴れの交差する天候はいかにも山の上のにお寺らしく興味深い。
 行事が始まる頃には素敵な秋晴れになった。


 庫裏の控え室で行者装束に着替えて大玄関へ。
 行者の装束というのはいわゆる山伏の姿である。
 参加する行者は総勢で20名近くである。参拝者は隣の福井県からもバスをチャーターして参加するという大規模なものである。

 履物は白の地下足袋である。
 この地下足袋はコハゼ(留め金)が片脚に10くらいあるのでる。両足で約20のコハゼを止めなければならない。ようやくコハゼを止め終わってから、儀式の前に読む願文を忘れたことに気づく…慌てて10×2のコハゼを外し控え室へ。なにしろこのお寺は近郷一の名刹であるから庫裏も巨大である。玄関から控え室まで息が切れるほどダッシュして願文の包みを取りに帰り再び10×2のコハゼ…ようやく地下足袋を履き終えてからまた気づいたのは願文の包みが軽い!薄い!こわごわ中身をを開けると空ッぽである!!願文を取り出しやすいように完全に包まなかったので抜け落ちたらしい。再び10×2のコハゼを外してダッシュで巨大な庫裏を往復。そしてまた10×2のコハゼ…
 玄関では私がやけに遅いので不審の声が上がっているのが聞こえた。本当に冷や汗が出る思いをした。


 本番では最後に鬼門に矢を放つのだが、その最後の最後で真言を間違えてしまって凄く悔しかった。
 宝弓師も今年で3年目だが少し慣れた頃に失敗をするというのは何にでも当てはまるものらしい。来年は気を引き締めてがんばりたいところである。

 大祭の後、門前にある流々亭という素敵なお茶やさんでコーヒーを頂いた。
 一仕事した後のコーヒーは格別に美味しかった。

      【松尾寺】   http://www.matsunoodera.com/

      【流々亭】   http://rurutei.net/